ニッケイ新聞 2009年9月1日付け
自民党が負けるのは世論調査からも予測できたけれども、まさかこんな大敗するとは思わなかった。民主圧勝。自民は歴史的惨敗の図をこれほど見事に描くのは難しい。野党第1党が選挙でこんなに勝つのは戦後初めてだし、自民のベテランが次々に討ち死にしたのも珍しい。あの海部俊樹元首相も落選、公明党の太田昭宏代表や国民新党の綿貫民輔党首も議席を失う悲劇である▼これで民主党政権が誕生し、鳩山首相が「ニッポン丸」の指揮官になるのだが、いささかの心配もある。外交と安保の2つについての不安が消えない。日米関係の深さはいまさら言うまでもないけれども、民主党はインド洋で行っている海自護衛艦の給油活動を来年始めに停止し撤退するとしている。少なくとも、アメリカはいい顔はしないし、間違いなく大きな渦が起きる▼政権公約では「高速道路の原則無料化」を掲げているが、国民の反対は65%に達し賛成30%を上回っているし、高校の授業料免除も本当にできるのかどうか。民主党は社民党、国民新党と連立政権を組む意向を示しているが、社民党とは外交や安保政策で違いが大きいのも課題になるのではないか▼今回のような衆院選の結果になったのは、選挙法の小選挙区制の影響が大きい。先の小泉首相の「郵政選挙」で自民が大勝したときの逆転現象と見ればよくわかる。このような政治の動きが続けば、2大政党制が定着するだろうし、英国型に一歩近付くので歓迎したい。自民党は余りに大きな物を失ったが、解党的な出直しを図り政権奪回を目指して欲しい。 (遯)