ニッケイ新聞 2011年6月28日付け
日本もだが、アメリカの財政も厳しい。オバマ大統領の国際戦略には、強い非難もあるが、核のない世界を目標にし、アフガンやイラク政策を評価する声も高い。だが、経済政策については莫大な赤字財政であり、共和党や国民からも「大きな政府」批判が巻き起こり、国防費も大幅な縮小が決まっているし、予算には「貧」の字が躍っている。世界的なドル安は、こんなアメリカの苦境を反映したものだ▼我が祖国も、国の借金が900兆円を超えており、高齢者の社会保障に充てる予算が不足し、消費税を10%に値上げするかどうかで政府や民主党が議論しているが、この自民党の政策を横取りしたとされる法案が、きちんと法制化できるのかも、今のところ不透明としか申し上げられない。そこへ—大震災である。これの復興には膨大な予算が必要だが、この難しい課題もあるし、国民も安閑として晩酌どころではない▼こうした厳しさを直視した米の格付け会社は、日本国債の評価を格下げにしたが、これは致し方があるまい。それでも、今、金融危機に見舞われているギリシャやポルトガルのように国債を外国で販売するのではなく、日本は国内の金融機関に引き受けてもらう方式なので—直ぐに国際的なデフォルトにはならないの見方が有力ながら—それでも「財政危機」なのは、かわらない▼日本をこんな借金大国にしたのは、菅政権や民主党だけの責任ではなく、55年体制からの自民党政権の大きな政治的な汚点だが、これまでの右肩上がりの「拡張路線」から「堅実化へ」の道を選び、先ずは借金のない「健全な財政」を望みたい。(遯)