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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年8月7日付け

 「カースト」という厄介な習俗もあるけれども、あのお釈迦さまが仏教を説き、「ゼロの発見」の凄さもある。この国の子らは99掛ける99まで暗記するそうだし、こんな数学の強さもあって経済成長を続けあっという間に新興発展国になった。今や12億人の国民を擁し、インドはもうすぐ中国を抜いて世界一の大国になる▼先進諸国も、この巨大な市場を目指して進出しているが、日本の企業も積極的であり、成功したケースも多い。自動車の「スズキ」も工場を設立し、中小企業も数多く進出し経営も軌道に乗っており、将来的な展望も明るい。だが—余りに成長を急ぎすぎたせいか企業には欠かせない産業基盤の整備が遅れているのも否定できない▼先ごろインド北部で起きた大停電は、そんな一つである。首都ニューデリーを含む広域停電によって6億人を超える人々が影響を受けたとされるが、恐らくーこうした事態は始めてのことではないか。ブラジルの人口は約2億人。6億人がいかに大きいか解ろうというものである。インド政府は、火力や原子力発電の新設と整備を急いでいるが、電力不足の現実は変わらず住民らの不安は続く▼しかも、中国から輸入した火力発電は、契約通りの発電能力がなく、高効率の技術を持つ日本の重電メーカーへの発注が急増しているの報道もある。とにかく、工場にとって電気は心臓であり、インフラ整備を急ぎたい。なお、「スズキ」の現地工場では、会社側が従業員らに「カースト」の差別的な発言をして暴動が起こるなど複雑な問題はあるが、この国は間違いなく未来の大国を約束されている。(遯)