サンパウロ市リベルダーデ区の静岡県人会館で7日、第5回橘和音楽祭が開かれた。保江氏が指導する歌唱部門の生徒や娘の早苗氏が教えるコーラスやシンセサイザーの生徒が、橘和ファミリーで組んだバンドやカラオケの演奏で練習の成果を披露。外部からの人も含め、参加者全員が1日中、音楽や交わりを楽しんだ▼この音楽祭は大会ではないから順位を争う必要はないし、2歳から80代までの人が歌い、踊る曲は、童謡や演歌など幅広い。また、手作りの衣装を着た子供達のお遊戯や、曲に合わせて参加者が踊る場面も随所にあった▼これらの様子に、昔ののど自慢大会はバンド演奏で行われた事や日本人会などで日本語と共に童謡やお遊戯を教えてきた事、カラオケを含む歌が日系社会を繋ぐ絆の一つである事などを考えさせられた。夜、帰宅後は、留守中に娘達がいじった本棚からはみ出していたサイン帳に昔書き留めた「水を飲む時は、井戸を掘った人々を忘れてはならない」という言葉が目に飛び込んだ▼自宅近くの日本人会は先日、創立50周年を祝うなど、日系社会の中での日本人会や日本語学校の存在意義は計り難い。日本の文化を残し、伝えるために、カラオケなどが果たしている役割は大きいとも感じる▼橘和音楽学校の行事は年2回で、普段は顔を合わせられない生徒も旧交を温めあう。バンド演奏で歌いたくて来た外部の人も含め、参加者全員が家族や友の如く感じられるのも、橘和ファミリーと音楽を中心とする「井戸」の水を共にしている故だろう。農作業で疲れた手を休めた時、ドラム缶風呂で星空を見つめた時、歌で自らを慰めたであろう移民達への感謝の念も覚えつつ。(み)