その昔、「わかっちゃいるけどやめられない」という歌詞の入った曲があった。「わかっちゃいるけど」の後には、「始められない」「言い出せない」など、色々な台詞も入りうる▼身近な人が「止められない」と言う例には喫煙や浪費癖、飲酒、喧嘩などがある。3日のTVでは、喫煙者は視力を失う可能性大との研究結果や、様々な理由で煙草を止めた人や止められずにいる人へのインタビューが報じられた。心筋梗塞を起こして緊急入院、手術後に医者から禁煙を言い渡されたが、止められないとこぼした知人もいる▼「心筋梗塞や手術など痛い思いをしても止められないのか」と思ったのは十数年前。だが、「夜8時には会社を出、12時前に寝ろ」との医師の忠告を守れない人、糖尿病なのに炭酸飲料や菓子を止められない人、携帯電話を手放せず夜更かしをして起きられない人、一つ言われたら二つ言い返す人など、例を挙げたらきりがない▼コラム子の周りには、根は優しいが、負けず嫌いで思った事をすぐに口に出すため、あちこちで衝突する青年もいる。だが、彼の持ち味は弱さを持つ人の傍にいられる事だ。友人と話し込んで午前様もしばしばで、家族が「心配で眠れない」と嘆く声も出るなど、周囲に迷惑をかけるのが玉に瑕だが▼頭でわかっていても、止めるべきは止めるを実行するのは難しいし、批判に終らず、建設的な物言いを常にというのは至難の業。先の曲を歌った歌手は「こんな歌がヒットするようでは悲しい」と悩んでいたそうだ。他者への迷惑や健康被害は避けて欲しいが、こんな矛盾を抱えているのが人間と思えば、一緒になって笑い飛ばす余裕も出てくるかも。(み)