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第6回 ブラジルで儲けるとはどういうことか?

 ブラジルに住んでいる方や、駐在をされた方は良くお分かりだが、ブラジルは銀行にひも付けされた徴税システムと、古い労働者全面保護の労働法に基づいて運営されている国である。
 わかりやすく言うと、労働者が簡単に辞めさせられたり(無収入の状態になったり)しない、そしてより良いサラリーをもらえるような労働法で守られており、最低賃金もどんどん上がり、毎年インフレ率以上に昇給し、さらに支給額の倍にもなる社会保険や基金、税金等を上乗せされ、労働者が安定的により多くのお金を手にする仕組みが作られている。
 その一方でITも駆使して、銀行をハブに網の目のような徴税システムを構築し、あらゆる個人、企業から少しでも多く徴収できるようになっている。スーパーでも、どこでも、ほんの小さい物を買う時でさえ、納税者番号を聞かれるが、それを入力し、カードで払った瞬間にその情報が銀行を通じて、税務署でも把握できるようになる。
 これは企業も同じで、銀行発行の正式な請求書―領収書でやり取りをすることが本来は義務づけられており、これで脱税がしにくいようになっている。昔、あるブラジル人の中堅企業の経営者が、「ブラジルは、売上げが上がって、儲かっても、税金をまともに払ったら、会社がつぶれることもあるんだよ」と言っていたのが、鮮明に記憶に残っている。
 では、こんなブラジルで儲かっている人や会社はあるのだろうか? もちろん、個人でも企業でもたくさんいる。フォーブスの2013年保有資産10億ドル以上の資産家の国別ランキングでも、ブラジルは第6位で46人。日本は16位で22人であった。また、外資系企業の配当送金も何兆円単位であり、儲かっている企業もたくさんある。実は、ブラジルはマイナスの面だけではなく、一度プラスのスパイラルに入ると、なかなか美味しい国なのである。その一つが日本企業の弱いファイナンスだ。
 現在の政策金利が11.25%で、こんなに高い国はめったにない。本来はこれを活かさない手はない。一度蓄財をするなり、大きく資本金を入れるなりして、徴税システムに取り込まれるだけでなく、金融の恩恵を被れるようになると、途端に立場が逆転したりする。
 そして、それをよくわかっている政治家や大企業のトップはついつい犯罪に手を染めてしまう。今ブラジルで連日報道されて問題になっている、ペトロブラスの関係者が行っていたように、スイスの銀行に口座をつくり、そこへ賄賂などをダイレクトに振り込んでもらうことである。そうすれば高い税金も逃れられ、一気に蓄財もできるが、当然これは犯罪なのでお薦めできない。われわれは地道にプラスのスパイラルに入る方法を日々模索していかなればならない。

輿石信男 Nobuo Koshiishi
 株式会社クォンタム 代表取締役。株式会社クォンタムは1991年より20年以上にわたり、日本・ブラジル間のマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ、各種認証取得支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。  2011年からはJTBコーポレートセールスと組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供と中小企業、自治体向けによりきめ細かい進出支援を行なっている。14年からはリオ五輪を視野にリオデジャネイロ事務所を開設。2大市場の営業代行からイベント企画、リオ五輪の各種サポートも行う。本社を東京に置き、ブラジル(サンパウロ、リオ)と中国(大連)に現地法人を有する。

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