ホーム | 連載 | 2015年 | 『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲 | 『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(97)

『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(97)

2014年に正式に開所式をしたマリンガー日本公園

2014年に正式に開所式をしたマリンガー日本公園

巨大日本庭園?

 出稼ぎ帰りの中には――マリンガー出身者以外でも――ここに居を求める人が多い。ただし仕事は、農業を選ぶ人はいない。
 マリンガー文化体育協会、略称アセマの会員は900人。毎年、日本文化週間を催している。今年で24年目になる。日本語学校や宗教団体が協力する。舞踊、生け花を披露し、日本食を出す。1、200~1500人がボランティアで働く。
 さて、これは周知のことであるが、2014年、このマリンガーで「パルケ・ド・ジャポン」が出来上がった。
 このパルケ、10年前から建設が始まり、日本語の新聞には「日本庭園」と訳されて紹介されていた。日本から専門家が来て指導した――ともあった。広さは10万平米で、その巨大さが読者を驚かせた。
 が、筆者はスッキリしなかった。日本から専門家が来て指導する以上、本格的な日本庭園の筈である。が、そうとすれば、相当高い質になろう。美観、清澄さ、静けさ、品と格……。しかも10万平米などという広さになると、造成には莫大な資金がかかる。完成後も、清掃代だけでも馬鹿になるまい。それを、どうやって調達したのか、あるいは、するのか?
 その後、新聞紙上では「日本公園」と訳語が変わった。公園なら資金の必要量は少なくなる。が、質は相当変わろう。
 庭園か公園か……釈然とせぬまま過ぎた。
 未だ完成前の2013年、筆者は、このパルケを訪れる機会を得た。中に入ると、小さな日本風の庭があって、そこを少し歩くと、突然、足元の土地がスーと切り落とした様に低く下がって行き、それが遠くまで続いていた。広い眺望が前方に開け、小さく見える日本様式の建築物が二つあった。
 実際は大型のレスタウランテ、イベント会場ということであった。ほかに、点の様に見える茶室があった。その周囲には広い池が造られるという(左前方に体育館もあるが、これはパルケとは別)
 やはり、日本庭園を構想している様であった。 それにしても広大で、急な傾斜のある庭園である。もともとの地形を生かして設計したのであろうが、この土地を日本庭園にするという大胆な発想には息をのんだ。こういう発想のできる日系人が居ったのか……と感嘆もした。
 ところが、それは前市長のシルビオ・バーロス氏だという。パルケの所有者も市であった。
 2008年の日本移民100周年の記念事業として、その数年前、市長が企画した(最近聞いた処では、10万平方メートルというのは一部の遊休部分も含めての数字という)。
 このプロジェクトは、連邦・州両政府の支援も得た。無論アセマは協力した。その一つとしてマリンガーと姉妹都市の兵庫県加古川市に――JICAを通じて――専門家を派遣してもらった。
 2015年現在「パルケ・ド・ジャポン・メモリアル・イミン100」という団体が市から請け負って管理している。鈴木エドアルドというご老人を会長に、日系人、ブラジル人60数人が委員になって経営に当たっている。
 維持・管理費は市から援助があり、レスタウランテ、イベント会場からの収入も予定している。 パルケのチーフ・マネージャー、富居(ふごう)メアーリさんは「ここで、非日系人にお茶や日本風食材その他に接して貰い、日本のことを大事に思ってくれるようになって欲しい」という。 今後、このパルケが本格的な日本庭園を目指すのか、単に日本風の公園になるのか、あるいは第三の新しいスタイルを打ち出すのか……筆者には見当がつかない。
 いずれにせよ、パラナ州に於ける「日本的なるもの」の屈指の存在になって欲しいものである。

image_print

こちらの記事もどうぞ

  • 『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(99)2016年2月26日 『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(99)  勝山さんは「正直、真面目、勤勉……」と言って、一寸困った様に笑った。言わんとすることを、適格に表現できないもどかしさを覚えているようだった。 筆者が、ある知人から聞いた話を思い出して、「昔の親は、皆、日本人の恥になることをするナ、と言って子供を教育したそうですが……」と言うと […]
  • 愛知県と聖州が姉妹都市に=大村知事「記念すべき始まりの日」2018年9月13日 愛知県と聖州が姉妹都市に=大村知事「記念すべき始まりの日」  愛知県と聖州は10日、「友好交流及び相互協力に関する覚書」に署名した。これは生物多様性保存を中心とした環境分野での協力強化を目的としたもの。同日、大村秀章県知事一行らはピニェイロス区にある聖州観光局を訪問し、署名式が行われた。  2010年に「生物多様性条約第10回 […]
  • 日本側でも外務大臣表彰=吉川秀隆さん、斎藤俊男さん2018年9月1日 日本側でも外務大臣表彰=吉川秀隆さん、斎藤俊男さん  平成30(2018)年度の外務大臣表彰では、日本側でもブラジル関係者2人が受賞している。表彰式は7月24日に東京の飯倉公館で行なわれ、河野太郎外務大臣より表彰状と副賞の正絹風呂敷が贈られた。  タカラベルモント株式会社の会長兼社長の吉川秀隆さんの受賞理由は、「日本と […]
  • 大阪・聖姉妹都市協会=ポ語スピコン優勝外山さん来伯=「在日外国人を助けるヒントに」2018年8月8日 大阪・聖姉妹都市協会=ポ語スピコン優勝外山さん来伯=「在日外国人を助けるヒントに」  大阪・サンパウロ姉妹都市協会(吉川秀隆会長)が2月に行なった『ポルトガル語スピーチコンテスト』で優勝した外山朝陽さん(17、愛知県豊橋市)と同協会の粟嶋裕さんが7月25日に来社した。  同協会は同コンテスト優勝者を毎年伯国に派遣している。外山さんは24日に伯国に到着 […]
  • スピコン弁論大会9月開催=申込締切は来月13日まで2018年7月5日 スピコン弁論大会9月開催=申込締切は来月13日まで  9月23日に栃木県人会館で開催される「第12回弁論大会」「第39回サンパウロ・スピーチコンテスト」の出場者を募っている。ブラジル日本都道府県人会連合会(山田康夫会長)とブラジル日本語センター(日下野良武理事長)の共催。締切りは8月13日必着。定員30人。  弁論の部 […]