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県連故郷巡り=伯国/ポルトガル/日本=不思議な〃三角関係〃=第20回=ドン・ペドロ四世とラジオ体操

ポートワインSandemansの博物館で説明を受ける一行

ポートワインSandemansの博物館で説明を受ける一行

 岡井さんに国内産業の様子を具体的に聞くと、「昔、ポルトガルは繊維産業が強かったけど、中国製が3分の1の値段で入って来るようになって壊滅状態になった。でも最近は中国の人件費が上がってポルトガル製と30%ぐらいしか差がなくなって、息を吹き返してきている。ポルトガルはどうやって食っていくか。これからが勝負時だね」とのこと。
 さらに「この国は食べ物の70%を輸入しているんだ。若者は農業をやりたがらない。給料が安くても会社員がいいと思っている。漁業だってEUに入ってから漁獲高割り当てができて好きに獲れない。ポートワインはポルトガルだとみんな思っているけど実はイギリスの会社が多い。外国企業ばかり。最近は工業団地に中国の工場が次から次へとできている。ある町では3カ月間で50カ所も中国の工場が出来たって報道があった。おかげで地場企業がどんどん潰れている」と嘆く。
 今でもポルトガル人はたくさんデカセギしているという。「だって物価が安いんだ。例えばここではコーヒー1杯100円しない。でもフランスでは500円。ドイツ、フランスより物価が3、4倍安い印象だね。だから働きに行くんだ。今でもすごい金額を外国から送金してくるよ」。
 聞けば、ここから車で1時間走ればスペインだ。「もう国境か。ポルトガルは小さいな」と感じたが、良く考えたら、国境まで車で何日もかかるブラジルの方がデカいのだ。
      ☆
 5日目の9月21日、ポルト市内観光では旧市街の中心地「プラッサ・ダ・リベルダーデ」をバスで横切った。「サンパウロ市の東洋街と同じ名前だ」と懐かしい気持ちで見ていたら、ポルトの方には「ドン・ペドロ四世」(ブラジル名はドン・ペドロ一世)の勇壮な乗馬像が建っていた。
 思えば、リベルダーデの同名広場には日本に関係した「ラジオ体操の塔」が建っている。世界的に見れば、東洋街の方こそ特殊なものが建っているのだと痛感した。
 一行は、ドゥエロ川沿いポートワインSandemansの博物館を兼ねた醸造所へ向かった。
 ドゥエロ川の川上の段々畑で、過酷な労働によって丹念に作られた葡萄のみを使用してワインを作っているという。段々畑だとまんべんなく太陽が当るので品質が良いという。
 そんな紹介ビデオを見た大浦文雄さんは、「まさに『耕して天に至る』、昔の支那人はうまいこと言ったな」と感慨深げ。かつて李鴻章が瀬戸内の島々の段々畑の様子を見て、そう表現したらしい。調べてみたら、実はその言葉の後に『以って貧なるを知るべし』と続いていた。平地の少ない地形で農業によって生活を立てる者の苦労と知恵が、ワインには詰まっているようだ。
 ポートワインは、あえてアルコール発酵を途中でとめるので、糖分が残って甘味が強いと解説していた。食事と一緒にというより、デザートの時に飲まれることが多いそうだ。

「ポルトの街並みに移民画家・玉木勇次の原点を感じる」という大浦さん

「ポルトの街並みに移民画家・玉木勇次の原点を感じる」という大浦さん

 川沿いから丘の上のポルト旧市内の眺めが絶品だ。一行は、伝統的な石造りの建物がウロコのように重なって丘の上まで続く、いかにもヨーロッパの伝統的な田舎町の景色に見とれていた。
 大浦さんは「これは、まさに玉木勇次の絵の世界ですよ。玉木はこういう街並みにインスピレーションを受けて、自分流に描いた。建物の一つ一つから、人間の営み、ぬくもりが感じられる光景だ」とコロニア文化人らしい表現をした。(つづく、深沢正雪記者)

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