2006年12月1日付け
サンパウロ大学の「都市建築」「芸術・報道」両学部は、街に落ちている廃品のリサイクルも研究分野の一つにしている。「デザイン」「意匠」への活用だ。その成果は、担当教授が国際建築フォーラムで発表するなど、日本でも知られているようだ▼廃品は、役割がなくなったとされ、捨てられた日用品、主として路上生活者が集めてきたものを使うという▼学部の学生は、意外にも?日系が多いと聞いた。初期移民の一世たちは、ブラジル社会において、自身の力が不足して及ばないところで苦労した。ブラジルで生まれたこどもたち二世を、極力「弁護士」や「医者」になるよう仕向けたという話は、まじめな顔で語られたものだ。それはもはや伝説なのか、と思う▼三世や四世の代になると、高等教育を受ける子孫の進路は多岐にわたるだろう、との予測は当たったわけだ。子孫たちが自分たちの意思で選び、それを親が容認した結果である。早くいえば、職業としておカネになる、ならないは二義的である、とした進路の決め方である▼世の中、そんなに甘くはないぞ、といった見方がある中、大学で「芸術」を専攻する日系学生の増加は、移民百年の年月に相応しているともいえる▼廃品を美術品、新日用品にする、それを大学が研究する時代。学生たちの「作品」展示会が、来週早々、一日だけサンパウロ市内の屑屋組合の倉庫で行われる。指導教授は、作品を日本の会議に持ち込み、発表するそうだ。ブラジルの現状の公開でもある。(神)