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不況直撃、保見団地の今=山積みされた日本人の厚意=連載《上》=激減するブラジル人学校の生徒=各地から救援物資続々と

ニッケイ新聞 2009年2月20日付け

 日本有数の日系ブラジル人社会がある愛知県豊田市北部にある保見団地。全住人約一万一千人中、約三割をブラジル人が占めることで有名だ。そしてここは、創業以来初めて営業赤字を計上した世界最強の自動車メーカー、トヨタの企業城下町でもある。同社の下請け関連企業が集中する近隣市町村は「地域ごと倒産したみたい」(住民談)な寂しい雰囲気に覆われているという。ニッケイ新聞通信員の秋山郁美さん=愛知県在住=が手伝っている保見団地内のブラジル学校には、失業者向けの救援物資が届けられている。続々と集まる日本人からの厚意、そしてブラジル人住民たちのため息、危機にこそ見える真意を現地から伝える。(編集部)

 【愛知県発】「十二月はまだ十分にいたんだけど、一月二月は毎日のようにやめていったの」。昨年末にあったクリスマス発表会の写真を見せながら、ジョゼリア・ロンガット・フィジオ校長(ジョー)がため息をつく。
 三ヵ月ぶりに保見団地内のブラジル人学校エコパフ(パウロフレイレ地域学校)を訪れると、生徒数が激減していた。
 「この子はもうブラジル、この子は親戚のいる別の県に引越し、この子は小学校…」。ジョーお手製のサンタクロースの衣装に身を包んで発表をする子供たちの写真は、切ない記念となってしまった。
 近くの公立小学校へ通う日系子弟が通う放課後教室「カンチーニョ」の生徒も半分以下になった。名簿作りを手伝うと、先月の名簿にはたくさんバツがついており、あっという間に終わってしまった。
 日本人スタッフの溝口小百合さんは「ここをやめてもどこかで勉強していればいいんだけど、家で過ごしている子も多いみたいで」と心配そうに話す。
 「みんないなくなっちゃって寂しいね」。生徒の一人に話しかけると「でも、うちもいつか帰るつもりだったし」と案外さっぱりとした返事が返ってきた。
 「二十人ちょっと一気にやめて行った日も、みんなバイバーイって普通に帰って、見送る子供たちも元気で。泣きそうだったのは大人だけ」と小百合さんが思い返す。
 去って行った子供たちの代わりに、教室は各地から寄せられた救援物資でいっぱいになった。
 エコパフを運営する保見が丘ラテンアメリカセンター(野元弘幸理事)の呼びかけで、東海を中心に各地から一日に何度も宅急便が届く。米の袋、ジャガイモやタマネギなどの根菜、卵、インスタント食品などが、少し前まで授業が行われていた教室に所狭しと置かれている。
 三十キロの米袋をまとめて送ってくれる人もあれば、お歳暮などの余りものを集めて送ってくれる人、たった今スーパーで買ってきた野菜をそのまま渡しに来てくれる人などいろいろだ。日本人からの厚意が形になって山積みされている。(つづく、秋山郁美通信員)

写真=教室いっぱいに広げられた救援物資