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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年4月24日付け

 二十二日晩、弊紙とサンパウロ新聞共催の文協会長候補者による討論会では、一生懸命に言葉を選んで日本語でしゃべる小川彰夫候補、ポ語の原稿を棒読みする木多喜八郎候補と、その日語通訳というよりは自身の日系哲学を語る山下ジョルジ現副会長という対称的な行動自体が興味深かった。話す内容以前に〃行動〃が意味するところは大きい▼小川候補は、常に立ちあがって来場者の顔を見つめながら自分の言葉でしゃべった。木多候補は座って、手元に置いた資料を繰りながら、相応しい部分を探し出して読んだ。木多候補の日語通訳を担当した山下さんは、自身の日系哲学に基づいた意見を加え、何も見ずに堂々と論じていた。司会の一人として、この討論会は「誰と誰のものだったか」とふと疑問が湧いた▼山下さんは候補ではない。にも関わらず、長い文協経験に裏打ちされた含蓄のある話を立派な日本語で語り、感心させられた。木多候補は、希望の家理事長を十六年もやった類い希なボランティア精神と膨大な体験があるはず。誰が書いたか知らないが、それが原稿に反映されておらず、本来の力が出し切れていない印象を受けた。しかも棒読みでは、頭の中に施策が入っていないと言われても仕方がない▼図らずも討論会終了後に、ある来場者が「今日の金メダルは小川さん、銀は山下さん、銅がもう一人」と言い表していたが、存在感と言う意味ではまさにその通りだった▼泣いても笑っても、文協会長が決まるのは今週土曜日の評議員会だ。強烈な追い上げを見せる小川候補の六年越しの念願が叶うのか。結果は、投票箱を開けるまで分からない。(深)