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日本語教師リレーエッセイ=第3回=「火が消えないように」=保護者向けクラス開設=タウバテ日本語学校=漆畑恵子

ニッケイ新聞 2010年6月19日付け

漆畑先生と生徒

漆畑先生と生徒

 日本文化を継承していく難しさの中で、「日伯文化協会の責任者は」「どのようにして参加者をふやし向上させるか」または「興味を起こさせるか、それについて責任を負うか」ということをいつも憂慮している。
 日本語を教えている学校、日伯文化協会が管轄している学校では、ほかの語学を教える学校とは違うやり方(日本語だけでなく文化も教えつつ、それを継承していくということ)を続けていきたいと思っている。
 私たちの日伯文化協会では、年間を通じて行事に参加したいという会員をふやすという目標がある。そうすれば、日本移民がもってこられた何千年の文化を、徐々に広めることができるからだ。
 その活動の中でも、新年のはじまりの式―拝賀式では、日本とブラジルの国旗を揚げ、両国の国家を歌う。最初にブラジルに来られた移民の方々に一分間の黙祷をささげ、年男、年女の人たちのことを思い出す。
 一品ずつもちよって、お酒で乾杯する。一年の間には、他の式も行う―父・母の日、敬老・子どもの日、資金を得る活動として、たとえば、焼きビンゴ(焼きそばとビンゴ大会)、すきやきの夜等を行っている。それから伝統的な運動会も行っている。
 日本語学校の行事の中には、日伯文化協会の方たちと一緒にする忘年会もある。その日はもちつきをして、劇やたいこ、その他の活動を行う。
 このような行事を現在まで、続けられているのは、なぜか。最初にこられた日本人移民たちから、次から次へと受け継ぎ、これまで文化遺産として責任を持って続けてきた方々のおかげである。だから、私たちも、代々続いている世代の一人として、その歴史を続けていく責任がある。
 続けるよう努力すること―これから何十年も、もう百年も火が消えていかないように。
 年月がすぎることによって、高齢者の中に意欲のある人が減っていることを感じた。新しい会員をふやさなければならない。参加する人たちがいないと、少しずつ日伯文化協会は、行事を行うことができなくなって、最後にはその戸を閉めることになってしまう。
 だから、減ってきている、新しい会員を増やすためには、やり方をかえないといけないと思い、次のようなことを考え出した。
 幼い子どもたちのクラスをひらけば、お父さんたちやおじいちゃん、おばあちゃんたちが、参加のよびかけにこたえて、日伯文化協会の行事に参加し、またその準備にも一緒に手伝い、関わるようになってくれるのではないか―と信じた。
 小さい子どもたちは幼稚園と保育園にクラスを2つに分け、保育園のクラスは、2歳半から幼稚園までの子ども、幼稚園のクラスは、5~6歳の子どもとした。
 実際、クラスの形を新しくしたことで、家族とその友だちによびかけがあり、一緒になって参加すること、協力者をふやすことという2つの目的を達成し、よりよい方向に向かっている。
 くわえてJICAの協力―青年ボランティアが、こちらの地域の先生たちのオリエンテーションや、モチベーションを高める役目を果たし、ブラジル社会・文化に一緒に参加する目的で、2年ずつ日本から来てくれているということがある。
 現在も4人目のボランティアに、現地6名の先生たちの指導をしてもらっており、みんなでいい仕事をすることで生徒はふえてきている。
 さらに、もっといい授業を提供したいという理由で、日本語を習得するのに最も大切で必要な、会話の力を養うことができ、将来の、ほかの様々な場面・活動においても力を出すのに役立てることができるようなやり方をはじめた。
 それで元は複式(ばらばらの年齢でレベルの違うたくさんの生徒を一人の先生が担当)だったのを、知識と年齢でレベルわけして学習する環境を作った。このようにかえたことで、生徒たちはよりよい将来設計を期待できるようになり、勉強に対する熱も高まった。
 また、一週間の授業時間を3時間にふやし、いろいろな文化行事(料理・たいこ・おりがみ・習字・そろばん・ゲートボール等)もすることにした。
 新しくかえたことの中には、保護者のために開いたクラスも入る。目的は、日本語学校に来る生徒たちのモチベーションをあげ、子どもたちの宿題を手伝えるようにである。教育の幅を広げたことは、そこに力を注ぎ込むことにおいて、子どもたちにとっても、父兄たちにとっても、いい刺激となっている。
 これらのことは、はじめの目的を達成し、結果を見ている最中ではあるが、もう成果から収穫の時期となりはじめている。

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