ニッケイ新聞 2013年5月11日
政界というところは、何とも奇妙なことが起こる。多数決は民主主義の根本的な原則であり、これは小学生の一年生でもちゃんと知っているし、腕白小僧の独断専行をも許さない。だが—である。数が多ければ、全てが正しいとは限らない。先の参院本会議が賛成多数で決めた「川口環境委員長解任」は、そんな悪しき見本の典型と言っていい。指揮を取ったのは、民主党の輿石東参院議員会長であり、日教組出身のご老人である▼川口順子さんは、女性官僚の草分け的な人であり、通産省を退官したのちに森内閣の環境大臣として民間から起用され、続く小泉首相のときには外務大臣として活躍したのはよく知られている。語学の天才であり、首相の補佐官として外交を補佐した才媛である。この川口参議が4月に中国を訪問し、仕事を終え帰国しようとしていたところへ、楊潔チ国務委員から会談したいと申し込まれ、これに応じた為に帰国が遅れた▼勿論、川口参議は渡航期限の延長を参院に求めたのだが、民主党などが反対し認められなかった。しかも、野党7党は、職務放棄だとして解任決議案を提出したの経緯があるけれども、楊氏は中国政府の要人であり、尖閣諸島など日中関係が揺れる今はとても重要な人物と判断するのは正しい▼民主党の元幹事長をも務め参院のドンともされるご老人には、こんな簡単な数式が解けなかったらしい。これはまあ—なんでも反対の日教組流なのだろうが、大手新聞の読売、産経、朝日、毎日も揃って「解任はおかしい」の社説を掲げていることも、ご参考までに—。(遯)