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日系健食業界の攻防=連載(1)=接客改善で常連客を増やせ=購入基準に戸惑う消費者

健康広場

2005年8月10日(水)

 日本で健康食品業界の経済規模は五億円とも十億円とも言われ、実数は掴みにくい。真偽は別にして「がんに効く」という触れ込みで、ブラジル産プロポリスやアガリクスの人気は上昇。多くの旅行者や駐在員が持ち帰り、中小の貿易商や生産者が生まれては消えている。一時の過熱ブームは去り、消費者獲得の競争は厳しさを増しそうな勢いだ。最前線でどんな攻防が繰り広げられているのか、関係者らに話を聞いた。

 「妻や知人に頼まれて、プロポリスを買いたいんですが」。今年五月中旬。日本の商社から、男性社員が出張してきた。健康食品を買うため東洋街に足を運び、バロン・デ・イグアッペの角からガルボン・ブエノ街をリベルダーデ広場に向かって歩いた。
 目当てのものはプロポリスのほかにアガリクス、グァラナの粉、ウーニャ・デ・ガットなど。依頼主から製造元や販売店、原産地について、特に指定されているわけではないので、本人の目が留まった店で商品を購入することになる。
 一口にプロポリスと言っても、液状、カプセル、スプレーなど種類は豊富で値段もピンからキリまで。生産者によって、もちろん品質も異なる。いったい何を基準に、選んだらよいのだろうか?
 実は、この男性は元駐在員で足掛け四~五年リオデジャネイロに居住。妻も同伴した。その筋の専門家ではなく一般消費者だから、詳しい成分分析を見せられても判断がつかない。低価格の品に、心が動くわけだ。
 結局、最初に入った日系人経営の健食店ですべて買い物を済ませた。看板が日本語で表示されており、店主に要望をきちんと伝えられると思ったからだ。薬効や服用方法などを尋ねて、プロポリスやアガリクスなどを購入。百レアル以上のカネを落とした。
    ◇◇◇
 ムラサン健康食品(リベルダーデ区)の村山正人さん(60、佐賀県出身)は、客層を分析して言った。「やっぱり駐在員や出張社員、日本人旅行者が多いんですよネ」。
 健康ブームの影響で民間療法に関心が高まり、ブラジル産品にも目が向けられるようになった。貿易を手がけているのは、大手商社より中小の個人企業が中心。訪伯する親戚や知人に購入を頼むケースが少なくない。日本人消費者の心を掴むには、どうしたら良いのか?
 村山さんは一九九八年三月に、店を構えた。それまでは、土産物店の従業員だった。健康関連の品数が増えていくのに、注目して独立した。
 売りは、専門店であること。「開店当時この界隈では、私ぐらいのものだった」。プロポリスだけで、三十社五十種類の製品をそろえる。ガレリアの中に三メートル×四メートルのボックスを賃借。資本金もそんなにかからなかった。
事業は三年目から軌道に乗り始めた。「不自由ない生活を、家族に送らせるくらいの売り上げは確保出来ます」。
 しかしここ数年、健康食品を扱う店が増加。競争が激しくなり、販売戦略を練らなければならなくなった。「値段をつけるのは、各店の自由。でもよそより高くしたら売れないし、逆に安くしたら収入が伸びない」。村山さんは思案した末、接客の改善に努力することにした。
 店の信用を高めて、常連客を増やそうと考えたのだ。「お客さんが店を選ぶ理由は交通の便や品揃えなど、いろいろ考えられる。接客が一番、大切じゃないかな。お客さんに信頼されれば、少し高くても買ってもらえるのだから」。
 開店して、七年。売上は安定期に入っている。丁寧な応対が功を奏したのか、駐在員が帰国後も注文。さらに知人にも店を紹介してくれるようになり、口コミで評判が広がっているという。(つづく)

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