健康広場
2005年11月30日(水)
原塊の識別、抽出技術、衛生管理、成分分析……。品質保証の鍵を握りそうな要素を総合的に考えると、プロポリス一瓶つくるのに相当の支出を強いられる気がしてならない。そのようなコストは、店頭販売価格に転嫁されるはずだ。
小売店をのぞくと、数レアル~数十レアルのものまで並べられている。業者は「安さだけを基準に選んだら、逆に腹痛を起こすことだってありますよ」と顔を歪ませた。
ブラジルでも高齢化が進行し、健康食品への関心は上昇中だ。とはいえ、多くは失業に怯えながら暮らしている。数々の条件をかいくぐってきた、高品質・高価格の代物は庶民に受け入れられるのだろうか。
やはり日本が、〃主戦場〃とみられる。高齢化社会なので、もちろん健康食品の需要も大きい。日本を中心に考えればブラジルの生産コストは低く、輸送コストや税金による出費も十分に賄えるだろう。
生産者や小売業者などに聞くと、取引先(生産、売上)の日伯比率は六対四というのが相場で、日本が上回っている。
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グリーン・フーズ社は、生産の九割が対日輸出向けだ。平尾健代表(65、北海道出身)は「品質を上げるには良い原料を使わないといけないし、ブラジルで売るにはコストが高くなる。もちろん安い製品もできるけど、それはちょっと……」と語る。
アルジャー市の工場は、今年三月に新築したばかり。「製造能力を超えるようなばかでかい商談には飛びつかず、販売代理店を大切にしていくような経営を心がけたい」とじっくり腰を据えている様子だ。
オリジナル製品も開発しているが、同社の特長はほとんどが委託生産であること。原塊の種類や特定成分の増減などによって、多種のプロポリスができる。それを顧客(発売元)の注文に応じてつくりわけている。
「商品を世に出し、信頼関係を築くことで、顧客は簡単に逃げていかない。取引先をいくつか持てば、リスクの分散にもなるはず」。
創業は一九九八年。日系健食業界への参入は〃しんがり〃に近いだろう。委託生産に活路を見出し、しぶとく生き残っていこうとしているのかもしれない。平尾代表は自身の戦略を確認するように言った。
「健康に良いというだけでは、もう日本で通用しない。効用のほか、おいしさや飲みやすさが要求されている。消費者のニーズに合わせた新商品も開発していかなければ」。
そんな同社も今、正念場を迎えている。ドル安レアル高の影響で、輸出に陰りがみえているのだ。「一ドル三~三・二レアルぐらいが理想なんだけど……。今は、じっと耐えるしかない」。対日輸出に頼っているので、打撃は結構大きいようだ。
為替相場の話題になると、平尾代表に表情は急に険しくなった。大きな壁をどう乗り切るのか、経営手腕が試されている。
(つづく)