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日伯双方の発展の為になる=日本式工業専門学校を創ろう!=サンパウロ青年図書館 天野 鉄人

 「日本の優れたところをここブラジルに持って来て、何かやれることはないか。それが出来れば導入者個人にも、日本ブラジル両国のためにも大いに利益になるんだがな」これはブラジルに住む日本人なら多かれ少なかれ、誰でもが考えているところでしょう。
 この考えのもとに多くの階層の人達が様々の異なった分野で日本の文化や技術の導入に関わって来ました。一例を挙げれば、日本の折り紙です。これで千羽鶴などを作って飾ればその日本的な繊細な美しさに多くの人が「まあ、綺麗」と感心します。
 別に和太鼓の導入に尽力する人たちもいます。ドンと叩けばその男性的な響きに拍手が沸きます。しかし綺麗と言うだけではブラジルの経済に貢献できるとは言い難いところでしょう。太鼓を上手く叩いたところで腹がくちくはなりません。
 私達、日本からの移住者としてはやはり自分達の生活の足しになることとか、「やっぱり日本人は偉い」とブラジル社会から評価され、また、両国の経済力強化や社会的地位の向上に役立つような「実のある」事柄が欲しいところですよね。
 この基本方針に沿って、私は「日本の生産技術方式を教える工業技術専門学校のブラジルへの導入」を提案したいと思います。この工業高等専門学校はそこで学ぶ生徒のためだけではなく、ブラジルの産業発展および日本の社会安定にも貢献しうる画期的構想だと信じます。以下、この「高等専門学校」の案をご説明致しますので、よろしくご検討、ご高見賜りたいと存じます。

▼まず、工業高校から着手する

 工業専門学校はその名のとおり、工業技術や近代的な工場の生産方式を学ぶ学校です。日本で言えば中学、ブラジルではFUNDAMENTAL―Ⅱをおえて、ここに入学します。修業年限は3年で日本で言えば工業高校に相当します。
 ブラジルにもこの種の高校はありますが、どちらかと言うと机の上での勉強が多く、実際に機械を動かし、物を作ると言う面が弱いと言われています。この日本と提携する新方式工業高校は従来の学校とは一線を画し、基礎をきちんと学び、その上で実際に生産現場に入り、「物を作る技術・喜び」を学びます。また、近代的な自動製造装置などにもなじみ、世界的な水準の工業専門学校生を育てるのです。
 この工業高校はブラジルの教育法に基づくブラジルの学校法人です。従い、教育科目としては法規で定められたカリキュラムを履修します。
 その内、外国語の科目では学校の方針として日本語を必修科目とします。日本語は一般的な教養語句だけでなく、工場や企業の実務で使うような言葉を優先的に習うようにします。週に2~3時間、3年間やれば、卒業時には日本の生産現場でも十分通用するような日本語がマスター出来るでしょう。
 学校の正規の授業の他に、クラブ活動としてはサッカーなどのほか、柔道や剣道などのチームを持ちます。その延長で、日本など外国の学校との対抗、交流試合なども実行すれば、学生達の意欲も増すというものでしょう。
 学生達は授業の一環として地元の企業、たとえばトヨタとかコマツとか―と提携してそれらの企業で実習させて貰います。これを通じて実際に生産する工場での雰囲気とか作業規律なども学ぶのです。そして3年の就学後は将来の会社幹部の卵として、これらの企業に就職する道も開かれます。
 また、これと別に工業高校を卒業するころには丁度18歳位になりますから、日本の企業に正式に採用され、入社することも出来ます。日本は今、若手の技術者は引っ張りだこですから歓迎されることは間違いありません。日本の政府もこの種の学校卒業生に優先的に入国VISAを発給する手配を進めています。仕事口のない今の状況を脱して、将来性ある父祖の国で技術者として働く、明るい未来が開けています。

長岡工業高等専門学校(By D.suga, from Wikimedia Commons)

長岡工業高等専門学校(By D.suga, from Wikimedia Commons)

▼次に高等専門学校に

 あまりなじみのない方が多いかもしれませんが、日本には高等専門学校=高専=という学校カテゴリーがあります。(別表参照) 工業の場合、高校3年の上にさらに2年、つまり計5年の専門教育を受けます。日本には全国に57校ほどあり、その卒業生の評判は高く、多くの一流企業で働いています。
 日本政府はJICAなどを通じてこの高専―KOSENの海外展開を実施しています。既にタイ、ヴェトナム、モンゴルなどに提携校があり、日本の先進技術を学び、その卒業生は既に日本の企業で正規社員として大いに活躍しております。
 ブラジルでも本来は「ブラジル高等専門学校」を直接新設できればよいのですがブラジルの公的機関との交渉、合意などに時間もかかるので、2ステップにします。まず、工業高校(3年)、次に成長して高等専門学校(5年)にしたい、というのがこの構想です。日本式の教育制度を急にブラジルに導入すると種々のトラブルなども起き易いので、このように慣れながら完成する方が良いと思われるからです。
 高等専門学校が完成したら、一般的な、機械、電気、設計などの基礎的科目の他に、IT(コンピューターなどの技術)、AI(人工知能)などの最先端分野の学科も設置します。「ブラジル高等専門学校」は計画通りに出来れば、ブラジルの生産技術の最先端研究教育の中心になることでしょう。

▼実現のための具体案

大島商船高等専門学校(By Kiensvay [Public domain], from Wikimedia Commons)

大島商船高等専門学校(By Kiensvay [Public domain], from Wikimedia Commons)

 この工業高専を実現するには種々の方式が考えられます。が、もっとも実現し易い方式としては既にこの地で学校を運営している団体と協力して、それを日本式の(需要に合った)工業高校にすることです。
 既に学校を運営している団体なら一般的な科目(カリキュラム)や教師陣はそのまま活用し、そこに新たに日本式に専門化する部門を付け加えれば良い。校舎は既存のものがあればそれを活用し、実習設備など高度の機器は免税措置を受けて日本から輸入するのです。
 ブラジルの工業関係教育機関としては(サンパウロでは)FATECとかETECの公立校、別に職業訓練校としてSENAIなどがあります。本来なら、この種公立学校と共同で「日本式高専」を立ち上げれば良いのですが、公立校が外部と組んで新しい教育施設となると、経営のやり方、人事面などでの難点が考えらえます。
 日本側にとって協業(CO―WORK)し易いのは既存の私立工業高校、或いは、日系の普通科学校で高校課程(COLEGIAL)を始めたいという団体です。この学校と日本側が提携して新工専を創設するのです。日本側は海外協力を行うJICA(海外協力機構)を通じて日本で実際に工業校、高専校を経営している機関に参加してもらいます。
 学校の設置場所としてはやはりブラジル工業の中心であり、こういう学校で学びたい子弟も多い大サンパウロ圏、が適しています。既に中学課程までを持ったサンパウロの日系学校、スザノ、モジまた、日系工場の多いカンピーナス、ソロカバなどが候補になるでしょう。
 で、具体的にどうするか、ですが、ブラジル側からは学校用敷地、既にある校舎などを提供して貰います。日本側からは学校用の機械設備、先進技術の指導員、教師などを提供します。この様にしてもお金はかかりますから、これは海外協力ということで日本政府に御願いすることになります。資金的には学校建設は段階的に数年度に亘ることになりますが、取り合えず10億円単位の資金投入、融資が考えられます。
 この地ブラジルの公的資金の活用或いは学校卒業生を引き受けてくれる地元企業の協力も考えねばなりません。しかしブラジル公的資金の活用は簡単にはいきませんし、それだけを当てにしていては計画がずれることがあります。始めから格好の良い青写真を示しても実現しない事には意味がありません。
 先ず自分達で出来ることから始めたいものです。理想を言えば、基本構想を決めて、来年にでも工業高校の1年生就学から始めたいところです。

▼工業高専校のメリット

 この様にしてサンパウロ圏に日本式工業高校、次いで高等専門学校が出来たら、この学校が関係社会にどのようなメリット、便益をもたらすか、その効果の程を以下に挙げてみましょう。
(1)先ずこの学校に学ぶ生徒、貴方の子弟に利益があります。地元の学校で世界の最新の知識、実技を学ぶことが出来るのです。
 その上、他の人に理解される合理的な考え方や、日本的な勤労の尊さ、組織で働くための心構えなどを学ぶことが出来るのです。学校を卒業すれば職場はほぼ保証されますし、地元の日系企業、或いは日本の一流企業で働くことも可能になります。この学校の卒業生には安定した生活と明るい将来が約束されることでしょう。
(2)ブラジルの国自体にとっても大きなメリットがあります。ブラジルの国民がこのような学校で学び、その活躍の場を全国に拡げて行けば、ブラジル工業技術、工業生産活動に大いに役立ちます。理屈ばかりではない、実際の物作り尊重の考え方が普及されればブラジルから世界水準の製品を外国に送り出されることになります
(3)日本にはどんなメリットがあるのか? 金と技術を出すばかりでは面白くないではないか、と思う人が居るかも知れません。が、それは違います。ブラジル工業専門校の卒業生は日本の工場で即戦力として働けるのです。しかも行く人の父や祖父が日本の人たちであれば、日本社会にも馴染易く、社会問題を起こす恐れもミニマムになるでしょう。
 その上、同じ祖先を持つ日系ブラジル人であれば、そのうち日本に定着し、家庭を持つもの自然の成り行きと言えます。そして日本でその子孫を増やすことになれば、日本社会の老齢化を防ぎ、日本社会の活性化にも貢献することになる訳です。

▼日系発展を目ざして

 ブラジルでは従来「日本人は農業で」と言う見方が強くありました。それは日本移民が入ったころは産業の主流は農業であり、ほとんどの日本移民が農業に生活の道を求めたからと言えます。
 しかし、それから110年も経た今日では状況が違っています。日本は今や世界でトップクラスの先進工業国です。工業では発展途上のブラジルに日本が協力でき、供与できることはやはり工業面でしょう。世界の強国は米国にせよ、日本、ドイツ、皆工業先進国です。経済的に成長著しい中国にしてもその大躍進の原動力は「工業」でした。多くの国民に職場を与えその生活を豊に出来るのはやはり物作りの工業なのです。
 別表の様にアジアの発展途上国でも日本式の教育を受けてチャンと技術教育、工業振興の政策をとって居ります。ブラジルが日本の金も使い技術協力で紙のたたみ方とか太鼓の叩き方を教わっている間に、他の国では産業の生産性を高めて自国の経済発展をめざし努力を重ねてきているのです。QUEM ESTAVA DORMINDO NO PONTO !()
(日系社会も世界の趨勢に合わさなくてはなりません。日系社会の力を結集して日本式工業専門学校(高専)を設立しましょう。(ご意見、感想はこちらへ=>  info@brazil-ss.com

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