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コラム 樹海

 明るく朗らかで美しい麗か(うらら)と長閑―は今の季節にこそふさわしい。黄色のイッペーが咲き誇りジャカランダーの紫も冴えわたる。木枯らしに痛めつけられた木々も薄い黄緑を芽吹かせ山や野を緑に染めようと頑張る。編集局の斜向かいにある小さな公園の草花も赤や白に混じって黄と紫の花々が己の艶やかさを競うかのように惜しげもなく色彩と芳香を振りまく▼春の夜は短いので朝は眠い。いや昼でも眠気が残りついうとうとしがちなのも冬の寒さから解き放たれ春の暖かさに眠りが呼び戻されるのに違いない。のどかで柔らかな日差し。暖かく肌を撫でてさっと通りすぎてゆく微風がまたいい味なのである。目を山野に向けると、樹木も草々もが色とりどりの花を咲かせて妍を競い合う。万朶には緑も日一日と色濃くなって眼福に浸れるのが何とも素晴らしい▼孟洪然は「春眠暁を覚えず」と詠むが、俳句では、のんびりとした長閑さに眠りを誘うような春の昼をとらえて「春昼」とし大切にする。夏冬春秋が画然としている日本とは異なりブラジルの四季は区別がきちんとはしていない。けれども、春はやはり春。夏もやがてはやってくる。秋の月はさやけく、冬の月は冴え、春の月は朧とされるが、サンパウロの春の月も霞に包まれるせいかすこしぼんやりとしてはいるけれども捨て難い▼春の山々は生き生きとし賑々しい。「山笑う」は「春山淡冶にして笑うが如く」からとったものだそうながら生気に満ち満ちした春の山は、笑うが如くに萌え新しい芽を吹き出してもいる。(遯)

03/09/25