ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

 桜草卓にコーヒータイムかな(広田ユキ)桜草野性は色濃くすんなりと(富重久子)二才児のことばあふるる桜草(馬場園かね)―桜草は多年草で日本では河原や山地に自生する。欧米では観賞用に栽培されている。花は紅、白、紫、黄色など多様。ブラジルでもこの美しい五弁花を愛でる人が多い▼桜といえば、戦後移住50周年を記念して、各地各所で植樹が行われたし、これからも続く。既成の桜公園や新名所もできつつあり、俳句同好者が吟行するなど賑やかだ。桜にまつわる名歌、名句が次々と生まれている。それほど日本の〃国花〃桜は身近かな花として広く親しまれている。移民の歴史よりは浅いけれど桜もこの地に定着した▼去る十七日付の本紙にブラジル初のシバザクラ(芝桜)が色鮮やかな花を咲かせた―とあった。ジャカレイのコチア農業学校とサンパウロ市内で試験栽培し、みごとに開花させたもの。桜育成の専門家・沖真一さんの研究成果であるが、芝桜の未来は約束されたに等しい。芝桜はアメリカ原産の多年草。桜に似た淡紅、淡紫、白色の小花が咲く。花壇の縁取り用、石垣の間などに植えられるそうだ▼冒頭で紹介した三句はサクラはサクラでも桜草のこと。やがて当地において珍しい芝桜を詠む機会が得られるだろう。桜花の観賞は、目がどうしても上に向く。反対に芝桜の場合、目線は下方へいく。そんな事情と風情に迫る佳句の誕生も間近い。芝桜が『ブラジル季語』に仲間入りする日が待ち遠しい。 (田)

03/09/24

image_print