ニッケイ新聞 2010年11月2日付け
ブラジル初の女性元首の誕生が決まった。ルーラ政権の官房長官として活躍したジルマ女史がセーラ候補を圧倒しての勝利であり、この南米の大国の歴史に画期的な転換を齎したのを評価したい。決選投票で戦った二人は、軍事政権に反対し、かなり強い圧力を受けたが、これを跳ね返しての政治活動が国民に認められ、今―やっと花が開いたと見たい▼ジルマさんも、元側近の不正疑惑やPT(労働者党)の政治とカネを非難され決して楽な戦いではなかった。だが、テレビ出演するようになると、色鮮やかな洋服や見事なヘアスタイルで茶の間の人気者になったのも大きい。難しい政策論よりも、庶民の好みというものは、こうした身近な着物やお化粧なのである。これはルーラ大統領の助言らしいが、そういえば、あの人も作業着から颯爽たる背広にかわった▼もう―この国の政治もテレビの時代であり、雄弁さもだが、着る物や立ち居振舞いが大切になってきている。そうした面でジルマさんは成功したし、あの笑顔が支持層を広げたのも否定できない。もう一つ、左派のルーラ政権が、過激な政策を取らなかったのが,国民に認められたのも、この選挙を有利にしたのを見逃せない▼支持率は80%を超え、海底油田や鉱物資源の高騰などで経済は安定し急激な発展もしている。その一方でボルサ・ファミリアなど貧困対策に力を入れ、今、1260万家族、5000万人に救済金を支給し、これが間違いなくジルマ支持に繋がった。恐らくジルマ女史はルーラ路線を踏襲するが、この国の未来像を描く視点も明らかにして欲しい。(遯)