ニッケイ新聞 2012年3月24日付け
徳永さんは、イヴァン医師がモジの病院の担当医と話して「訴訟をやめさせたのでは」と推測している。同医師に本紙がそれを質問したところ、「手術した医師とは単なる仕事上の知り合い。確かに話したが、手術する前の日、足を切断する必要があるとの報告を受けただけ。責めるような発言もなかった」と答えた。
「数日間でこんなに黒くなるはずがない」と徳永さんに話していたという当直医について、本紙が質問したところ「当直勤務員(plantonista)は専門ではないし何も分かっていない医者」と切り捨てた。
3月4日のダリア祭りの当日、根塚ホーム長にこの件について最初に尋ねた時は、「手落ちや誤診などとんでもない」と憤慨し、「入居当初から歩行器を使っていて、来た時点で片足はもう悪かった。いつかは入院して切断しなければならないということだった」と記憶しているとのことだった。
徳永さんは「入居時は普通に歩いていた」といい、イヴァン医師は「足だけの痛みを訴えたことは一度もない」という。根塚ホーム長の認識はこの時点で、2人とも大きく食い違っていた。ただし、17日にイヴァン医師らと一緒に取材した時の根塚ホーム長は、医師らの意見にすでに同調しており、「うちの医者はよく診てくれるし、モジやスザノで人気がある。家族からも好評。他の一般の老人ホームはもっとひどいですよ」と話した。
さらにホーム長は、「救急のとき以外は家族が入居者を病院に連れて行くことになっていると説明している。亡くなったのは気の毒に思うが、こうしたことを言われるイヴァン医師もかわいそうだ」と明確に擁護する姿勢を示した。
弁護士にも相談したという徳永さんは、「亡くなった後なので訴訟して損害賠償を請求するしかないと言われた。お金が入るからって母が生き返るわけではない。訴訟を起こすつもりはない。亡くなった後に言っても仕方がない」と肩を落とす。
「いい施設だと思っていただけにとても残念。母は写真にいつも良い顔で写っていて、ホームそのものはとても良かった。一番期待していた医者がダメだった」
ただ、徳永さんはホームや援協の関係者にも、「言っても仕方がない」と直接不満を訴えていない。
本紙記者からその主張を聞いた根塚ホーム長は語気を強めて言う。
「そもそもホームは元気な方が入るところ。高齢であっても、基本的には身の回りのことを自分でできる人を受け入れている。徳永さんは、お姉さんがホームでボランティアをしていたり、義兄がホームの経営委員をしたりと繋がりがあった。足の病気があることを隠してどうしても入りたいと言うので、手続きを簡単にして入れてあげたようなもの」
それに対し、徳永さんは「最初はホームに直接言ったが、指示を受けて援協本部できちんと手続きして入ったつもり」と強調し、「もっと早く病院に連れて行っていれば、あんなに苦しまず、足が腐る状態にまでならなかったのでは。それが悔しい」と繰り返した。(おわり、田中詩穂記者)
写真=「いい施設だと思っていただけにとても残念」という徳永さん