今年も5月第一日曜日に、サンパウロ市の静岡県人会館で橘和音楽祭が行われた。橘和オズワルド・保江夫妻とその子供達や配偶者、孫まで参加するバンドの生演奏やカラオケでの歌、シンセサイザーの演奏、コーラスを楽しむ中、歌手の一人が「橘和バンドは歌い易い」と言った▼その言葉を聞いて、橘和バンドの伴奏の巧さと思いやりを思った。歌手が日頃使うカラオケの演奏になるべく近い伴奏をと心がけ、楽譜を揃えるのと並行して、各自がユーチューブで何度も演奏を聴き、自分の音や役割を確認。歌手との練習以前に、家族での音あわせも何度も繰り返す▼思いやりや繊細さは舞台上のバナーやテーブルの上の花に添えられた手作りの札、今年の音楽祭の目玉の一つでもある「UPK(パウリスタカラオケ連合)のうた」の詞を作った川合節子氏への顕彰にも表れた。川合氏作詞、故島田正一氏作曲のこの曲は、2013年のサンパウロ州選抜カラオケ大会で発表され、唄う喜びや人の和について歌っている。作詞者顕彰は、この歌がUPKでもほとんど歌われていない事を残念に思う保江氏らの思いの丈を表す行為だ。川合氏やUPK役員と共にこの曲を歌ったコーラスのメンバーは、ひらがな書きの楽譜とそれに添えた漢字混じりの歌詞で歌の意味をより深く理解した▼イベント開催は骨が折れる作業だ。橘和音楽教室の行事は、バンドの練習や装飾、弁当などの手配、参加者を空腹で帰らせないために軽食の準備を依頼する心配り、終了後の器材運搬など、目に見えない部分での配慮によって支えられている。思いやりや愛情に満ちた橘和音楽祭。素晴らしい家族と支援者に心からの拍手を送りたい。(み)