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どこから来たの=大門千夏=(93)

 アステカのカレンダー・ストーン。本物を是非見たいものだ。私の心にこの思いがデンと居座ってしまった。
 アステカの前に興隆したマヤ文明は、メキシコのユカタン半島を中心に栄えた。彼らは天体鏡も、望遠鏡も持っていなかったのに、太陽の動きばかりか、月の周期についても知りつくしていたし、肉眼では絶対見えない冥王星、海王星のことまで知っていた不思議な民族なのだ。
 この石の暦はアステカ時代に作られたものではあるが、天文学に秀でていたマヤ民族の知識の集積である。カレンダーには地球誕生から現在、未来の出来事が書かれてある。
 既に太陽は四個死んでしまった。太陽が無くなる時は、毎回大きな地球滅亡劇が起きた。今、我々は「第五の太陽」の時代を生きている。カレンダーの最後の日付けは二〇一二年一二月の冬至。…と言うことは、この日、何か大事件が起きて、人類と地球は終わるのではないか。と、今、世界中で騒がれているゆえんである。
 しかし滅亡の日に何が起こるかは書かれていない。マヤの予言書にはただ「地球は天空の異変によって滅びる」「その日 太陽は曇り そしてこの世は終わる…」とだけ書かれている。
 地球滅亡には、惑星の激突、隕石の落下、地軸の移動、地球人同士の戦争、病気の蔓延などが言われているが、いずれにしても時間が迫ってきている。その日が刻々と近づいている――と言うわけで、おめでたい私は、こんな夢のような話にはすぐに乗りたがる。
 友人どもは鼻の先で笑って「もし滅亡が来なかったら、食事をおごってよね」などと冷やかす。でも数人の友人は「起きてもおかしくないよね。だってこの自然が大狂い始めたじゃあないの」と賛同してくれる…となると益々勢いずいてマヤだ、アステカだ、と、一人で騒いでいる。
 このカレンダーをぜひとも今年は見に行こう。地球が滅亡する前に見ない事には何にもならない。いざ、メキシコへ。
 しかしNASAは「謎の惑星が地球に激突することはあり得ません」と発表して、ささやかな私の夢を行く前からあっけなく壊してしまった。その上、多くのマヤ文明の研究家達までも「アステカの暦は現サイクルが終了しても新しいサイクルに入るだけで、永遠に終わりませんよ」と、終末説を否定して、私の熱病に水を差すような事を言っている。が、なにはともあれ本物の石のカレンダーをこの目で見て来よう。
 もしかして古の人達が知っていた宇宙のリズム。この私にも聞こえてくるかもしれない。今からドキドキしている。
             (二〇一一年)


 一人になりたい(ペルー)

 昨日から私はこのクスコの町に一人できている。今日は早朝から市内を歩き回り、さっき太陽の神殿を見てすっかり疲れてしまった。
 町の中心にあるアルマス広場。この広場の真ん中は公園で、ここのベンチに腰かけて、ぼんやり空を見ていた。美しい民族衣装を着たペルー人が赤ん坊を背負って通りすぎて行く。さまざまな帽子をかぶっている。部族によって決まった形があるのだろうか。
 のんびりとした気分、さわやかな風、三四〇〇mという高地にあるせいか湿気が無くて、気持ちが良い。
 さてお昼はどこで何を食べようか、一人の食事はつまらない。同じつまらないなら、やっぱり昨日と同じホテルで食べようか。

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