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えっ、尿?ブラジルのカクテル

グルメクラブ

6月24日(金)

 カトリック聖人の誕生を祝う六月祭(フェスタ・ジュニーナ)で遊んだ。
 裸電球をともした屋台が立ち並ぶ賑やかな光景をみて、幼い頃に親しんだ日本の縁日を思い出した。
 ブラジルの六月祭はヴィニョ・ケンテやケントォンといったお酒が名物だから、大人も十分楽しめる。普段目にしないようなあやしげなカクテルを売っているのも面白い。
 私の生まれた町の縁日に、お酒の屋台はあっただろうか。リンゴ飴をなめる私のとなりで父親が一杯やっていた記憶はない。
 金魚すくいや射的など遊戯の屋台は別にして、食べ物で言えば、綿飴、カキ氷、チョコバナナあるいはソース焼きそばしかその視野に映らない、お酒に興味がない年齢のことだから、そもそもはっきりしない。意味を見出せないと判断された光景は記憶しても、即刻褪色して消えるのみだ。
 しかし、腕を組んで考えた。酒を売る屋台は、ブラジルにあっても日本の縁日にはないものではないか。
 ブラジルの屋台のカクテルは、種類豊富でそれぞれの名前もユニークである。お馴染みラボ・デ・ガロは、ベルモット(ニガヨモギを主成分に数多くの薬草、香草類で風味をつけたワイン)とカシャッサを混ぜ合わせたもの。その意味は「おんどりの尾」になる。英語のカクテル(cooktail)の直訳だと分かる。コック(カク)はおんどり、テイル(テル)は尾のことだ。
 英名の「パクリ」くらいなら可愛げがあるが、よく見かける天使の尿(シッシ・デ・アンジョ)には首を傾げざるを得ない。カシャッサとジン、ウオッカ、クレーメ・デ・レイテ、レイテ・コンデンサードで作る。いくら天使でも、おしっこじゃなあ。
 国民的カクテル、カイピリーニャ(田舎の娘)を引き合いに出すまでもないが、カクテルは女性に捧げられている、あるいは女性を象徴するような名前が散見されるのが特徴である。
 ブラジルらしいといえば、モレニーニャ(褐色の女の子)。カシャッサ、クリーメ・デ・レイテ、そしてコーヒーを混ぜる。ほかにはマリア・モレ(優しいマリア)、エスパニーョラ(スペイン女性)が知られる。前者はブランデーをベルモットで割り、後者は赤ワイン、レイテ・コンデンサード、クレーメ・デ・レイテをミキサーで泡立て、グラスのふちにパイナップルの切り身を飾る。
 六月祭で遊んだ日、アモモール・ペルフェイト(完全な愛)というカクテルを見つけ、名前からしてこれは豪華そうだと思い注文したら、実際過剰なまでに酒を混合した品だった。激しく酔うためとしか考えられない。ウオッカ、ラム、レモン、たっぷりの砂糖をミキサーにかけ、グラスに注ぎ、甘いシャンパンでそれを並々と満たすのである。
 屋台で使用される酒はどれも国産の三流以下のクラスだから、味と酔いは推して量るべし。
 完全な愛。イエス・キリストを想起させる崇高な言葉だが、その御前、教会前の広場で酔いつぶれてしまった不謹慎な私は残念ながら、神を受け入れる資質に全く欠けているようだ。

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