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ドナー不足が深刻化=角膜移植順番待ち=サンパウロ市で最大四年=世界でも異例=宗教観が阻害の一因に

健康広場

2005年7月13日(水)

 死後にあなたの角膜を譲ってくれませんか? 角膜疾患による視力障害者が光を取り戻すには、人間の透明な角膜を移植することが必要だ。ドナーの数が少なく、手術を受けるまでサンパウロ市で最大四年、奥地で二年以上、待たなければならないという。世界でもあまり類を見ないことだ。ドラマ「アメリカ」で失明患者の実態が描かれ、一般に身近な問題になってきているのだろう。しかし、情報不足や国民の宗教観が臓器提供を阻害しているようだ。

 ある統計によると、全国で一万八千人が角膜移植を待ち、そのうち七千人がサンパウロ州内に居住している。年間の手術件数は、約三千件。アメリカが三万五千件だから、同国のわずか八%だ。
 世界の多くで、移植手術の順番待ちは無いという。というのは、感染症の恐れがある病気で死去した場合を除き、近眼・老眼、乱視、白内障でも使えるからだ。心臓移植のように、拒否反応もない。
 「理論的に、移植を待たなければならない理由なんかないんだ」。アイバンク・カンピーナスの理事で眼科医のレオンシオ・ケイロス・ネット氏は、切実に訴える。
 臓器提供に年齢制限はなく、アイバンクへの登録は、ドナーカードに必要事項を書き込むだけ。ただ死去した時、アイバンクに通知するため、肉親に意思を表示しておかなければならない。未成年は、両親や親権者の承諾が必要だ。
 角膜は眼球の最前部にある黒目と呼ばれる透明な組織。これを通して光が網膜に達し、初めて物が見える。(1)ウイルスや細菌による感染(2)遺伝的疾患(3)酸やアルカリによる外傷、火傷、眼を傷つけるような事故、薬物の副作用──で角膜が白く濁ると、視力が落ちてしまう。
 濁った角膜を透明なものと取り替えるのが、移植手術だ。ペリエ・ド・ケンシー(仏)が一七八九年、ガラスを使って試みたのが嚆矢。同氏の実験に、各国の科学者が注目。動物の角膜やプラスチックの人口角膜を使用するなどして、研究が重ねられた。その結果、人間には人間の角膜だけが適合すると分かった。
 当然、生身の人間の角膜は得難い。フィラトウ教授(旧ソ連・オデッサ大学)が一九三〇年代初め、死後の角膜も有効だと報告。世界各国で、移植が行われるようになった。手術の成功率は現在、九〇%以上に達している。
 順番待ちは、サンパウロ市で四年、奥地で二年以上になっているのが現状だ。ネット医師は「列に加わる患者数は日々膨らんでいるのに、ドナーは増えない。状況は複雑化しつつある」と警鐘を鳴らす。
 「カンピーナスで死亡届の数を見れば、四カ月で奥地の列をゼロにすることが出来るんだけど……」。
 ドラマ「アメリカ」で、盲導犬と同伴であることを理由に失明患者が劇場への入場を断られたり、目の見えない子供が学校でイジメに遭ったりしている。
 九割以上がカトリック教徒と言われるブラジル。教会は、「愛の贈り物」として臓器移植を認める傾向にある。だが、死後天国に入った時、現世の姿がそのまま続くと考えている人も少なくない。臓器を提供すれば、あの世で五体不満足になるということだ。
 手続きなどに関する情報不足も課題の一つ。死後六時間~十時間以内に、眼球を摘出。移植適否について検査した後、特殊な保存液で眼球を保存しなければならない。
 ネット氏は「遺族を煩わせることは、絶対にありません。献眼後には義眼を入れるので、外見上の変化もない」と強調。ドナー登録を呼びかけている。

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