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伸び悩む献血者数=戦争・惨事の経験薄く=国民に連帯意識働かず

健康広場

2005年8月10日(水)

 世界保健機関や赤十字社などによると、国民の三~五%が献血に協力すれば国内で輸血の需要を満たせられるという。中南米地域は平均一・三九%で、基準の半分以下。域内先進国のブラジルでさえ、長年のキャンペーンにもかかわらず、二%に留まっている。二〇〇四年六月に献血に関する法令が一部改正され、腎臓に異常のない糖尿病患者なども献血が可能になった。過去に戦争や大惨事に巻き込まれなかった上、病気に感染してしまうのではないかといった恐れや無知があり、協力者数が伸び悩んでいるのが実情だ。

 「けがをした覚えもないのに、ジュリアがいつも血腫を体につけて帰宅するようになって……。不審に思って病院に連れていったところ、主治医から衝撃的なことを告げられた」。
 元MTVの司会者でサンパウロ市議のソニーニャは昨年十一月、娘が白血病であることを告白した。ジュリアは間もなく、熱や嘔吐に苦しみ始めた。「医者でさえ検査の間、彼女の体に触れることは、ほぼ無理の状態だった」。
 絶望の淵から子供を救ってくれたのは、輸血だったという。特に血小板を補うことができ、週末は自宅で過ごすまでに回復した。
 しかし、献血者や輸血用血液のストックは不足。「息子に合うAマイナスの血液が足りない」と訴えた、ある母親の悲痛な叫びが耳朶から離れなかった。
 ブラジルで献血者の割合は、人口のわずか二%とみられている。「二~三カ月に一度、四百五十ミリリットルの献血をするのも渋りますネ」。アフォンソ・ジョゼ・ペレイラ・コルテス血液収集慈善協会理事は肩をすくめる。
 戦争や大災害に巻き込まれて市民が大量死した経験がほとんどないため、過去に献血の習慣や文化が根付かなかった。大久保拓司日伯友好病院院長は「惨事が起これば連帯意識が働いて、みんな血を分けてくれるはず」と話す。
 「採血中に、病気に感染してしまう」「体内の血液が薄くなって、貧血が起きる」といった誤解もあるようだ。確かに輸血が導入された十七世紀はシャーガス、梅毒、エイズなどの病気が発見されておらず、検査をきちんと経ずに使用されていた嫌いがある。
 現在、注射針は使い捨て。ルシアーナ・サンパイオさん(血液学)は「使用機器も、先進国と比べて何ら遜色がありません」と語り、採血で感染症にかかることはないと保証する。
 二〇〇四年六月に、法令が一部改正になった。内視鏡の検査を受けた人は一年間、献血が禁止されていた。制限日数が撤廃された。また糖尿病患者は、毎日インスリンを打っておらず腎臓・血管・心臓などに異常がない場合に、献血が許されることになった。
 麻薬の使用経験や不特定多数との性交渉の有無などについて、事前に問診。採血後の検査でシャーガス、梅毒、B型・C型肝炎、HIVなどの疑いが少しでもあれば処分される。輸血の対象から外される割合は、平均六~九%だ。
 検査に合格した血液はその後、赤血球、血小板などの構成物に分けられ上、血液銀行などを経由して患者の元に届く。献血者には、検査結果が送付される。〃無料のチェック・アップ〃を試してみませんか?

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