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日系健食業界の攻防=連載(2)=健食は一兆円産業=求められる品質保証

健康広場

2005年8月24日(水)

 日本で健康食品の市場規模は、実際にいくらくらいか? コロニアでいろいろ聞いたら、五億円、十億円、五百億円などと様々な推計値が飛んだ。プロポリスやアガリクスを扱う中で、肌で感じ取ったものなのだろう。
 厚生労働省のサイトによると、「健康志向食品」の規模は二〇〇〇年度に一・三兆円(推定)だった。二〇一〇年に、三・二兆円に膨らむ見通しだという。
 「健康志向食品」はヤクルトLT(ヤクルト)、オリゴヨーグレット(明治製菓)、キスミントガム(江崎グリコ)といった特定保健用食品やビタミン剤など栄養機能食品を総称した言葉。プロポリスやアガリクスは、数あるアイテムの一部でしかない。
 健康関連の書籍などによると、健康食品の市場は九六年に六千五百億円だったと言われ、約五年間に規模は倍増した計算になる。
 背景にはもちろん社会の高齢化があり、健康長寿を願う市民が増加しているということだ。六十五歳以上の高齢者は二〇二五年に日本国民の四人に一人になると予想されており、将来も有望な産業だとみられる。
 さらに、医療費の自己負担が二〇〇三年四月から、二割から三割に上昇。医療費の増加を抑えるためには、予防医療の重要性は増すわけ。大和総研は「健康食品の市場はこれからも拡大を続けよう」と見据える。二十一世紀の基幹産業に発展するのも、夢ではない。
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 「健康によいからといって、むやみに口にしても効果はないんじゃないか」。内科医のナカムラ・エリオさん(69、二世)は釘をさすように言った。
  自身、健康食品は有益なものだと考えている。情報過多に消費者が振り回され、一過性のブームに翻弄されているのではないか──。表情から、現実を冷徹に判断している様子がうかがえた。
 「病気を治すのは、患者。医者は症状を改善させる手伝いをするだけです」。患者にしっかりした目的意識がなければ快癒しないというのが、ナカムラさんの意見。健康食品はあくまで、補助するものにすぎない。現状は、主客転倒しているのだという。
 「例えばプロポリスには抗菌作用があり、体の状態をよくしてくれると思う。それで風邪を引いたら、プロポリスに飛びつく人が少なくない。でも、ただ飲むだけだったら、二年経ったら効き目が薄れますよ」。
 眉唾物が結構出回っており、消費者に品質を正しく判断する力を養ってほしいと注意を促しているとも受け取れた。科学的な証明がないと、商品の売上げを伸ばすことは無理だということだ。
 証拠に基づいた医学が可能になれば、健康機能を持った食品の市場は安定化するといえる。
 「プロポリスは十年前、アガリクスは四、五年前がピークだった」。サンパウロ州内の製造業者は、険しい表情を浮かべた。品質の保証が鍵を握りそうだ。(つづく)

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