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日系健食業界の攻防=連載(3)=小売がメーカーと提携 自社ブランドを確立

健康広場

2005年9月7日(水)

 「商売をやるなら、十年間に結果を出すことを念頭に置かなきゃ」。健康ヒロセ(サンパウロ市リベルダーデ区)の広瀬裕さん(57、千葉県出身)は、常に緊張感を持って仕事に取り組むべきだとの姿勢を鮮明にした。
 開店して三年になる。「今は老舗の店が、必ず売れるというような時代じゃないんですよ」。新規参入者でも高品質のものを扱えば、健康食品業界に食い込んでいけるのだろう。まさに、群雄割拠の状態なのかもしれない。
 連載一回で紹介した村山正人さんと同じく、長年土産物店で働き商業関係のノウハウを身につけた。「中国産品の人体への影響が問題化する中で、ブラジルから日本に送れるものと言えば自然食品じゃないだろうか」と思って独立した。
 日本と国内向けの比率は、六対四。高齢化社会の日本で需要は増すばかりだ。空調の整った小ぎれいな店内には、プロポリスを始めアガリクス、紫イペーなどが所狭しと陳列されている。
 「設備投資に特に、経費はかからない。品揃えをどうするかが問題なんですよ。『後でまた来ます』とお客さんが言っても、戻って来ないことがほとんど。だから、店にいる間に商品を売り込まなければなりません」。
 健康食品の出荷というのは、夏よりも秋がよく売れる。風邪の予防に購入する消費者が増えるからで、日本向けはこれからの季節が勝負どころだ。広瀬さんは製造会社と提携して、自社ブランドの商品を販売しようと戦略を練っているという。
     ◇◇◇    
 小売は一般に、メーカーがつくったものを卸から仕入れて店頭に並べるのが仕事だ。メーカーと提携、自社の名を付けて売る──。それはいったい、どういう意味を持つのか。端的に言えば、製造に関わっていくのだから商品に対する責任を負うということだ。品質に自信とこだわりを持っていると、消費者にPRすることにもなる。
 カラチ(KARATI、サンパウロ市ベラ・ヴィスタ区)の近藤將造代表取締役社長(62、東京都出身)は「販売するだけなら、その後のことは知りませんと責任逃れ出来る。でも自分の名前を入れれば、そうはいかない」と信念の固さを見せる。
 瓶詰めや箱のデザインなどに何万レアルの投資を迫られるが、商品がヒットするかは未知数だからリスクも少なくない。それだけに、パートナー選びにも気を使う。「衛生状態とか技術的なものもみるけど、最後はオーナーの人柄やモノに対する考え方かな」。
 品質の良いモノを適正な価格で消費者に提供すれば、販売競争に打ち勝っていけるというのが、近藤社長の考え。毎年、新製品を発売しているという。
 自社ブランドのプロポリスやアガリクスのほかに、ナチュラル強壮剤や卵油、マカなど取り扱う商品は多種多様だ。健康ヒロセと同じく、日本向けが六割。日本での顧客(cadastrado)は、六~七千人になる。国内向けのプロモーションにも力を入れ始めた。
 カラチはもともと、宝石の加工やデザインなどを手掛けていた。社名はイタリア語でカラットの意味だ。「十五年ほど前に胃かいようを患い、紫イペーを飲んだら快方に向かったので健康食品に興味を持った」。日本に関心を示す企業家がいたことも、後押しした。
 「いい品を出すことによって人々の健康増進に役立つことが、我々の社会貢献だと思っています」。
 健食業界はまだまだ、売り手市場。粗悪品があふれている。「もし商品が日本で問題になった時、××社の製品ではなく、ブラジルのものが悪いとなってしまうんですよ」。近藤社長の顔が、ゆがんだ。悪徳企業がいたら、業界全体の信頼を揺るがしかねないのだろう。     (つづく)

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