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鳥インフルエンザ=ブラジル上陸の恐れは?=連載(下)=備えあれば憂いなし

健康広場

2006年3月8日(水)

 鳥インフルエンザ(H5N1型)が人に感染した場合、死亡率は五十%以上? WHOの感染例を単純計算すれば脅威的な数字が弾き出され、世界を不安にさせている所以だ。
 歴史を振り返ってみると、スペイン風邪(一九一八年)に続いて、アジア風邪(五七年)、香港風邪(六八年)、ソ連風邪(七七年)が流行した。
 アジア風邪と香港風邪では、それぞれ百万人以上が死亡。スペイン風邪では実に数百万人~数千万人が犠牲になったといわれる。
 一説によると、人のインフルエンザは鳥からブタ、そして人に感染して生まれた病気。鳥インフルエンザの遺伝子が人の体内で突然変異を起こし、人から人に移ることが最も恐い。
 別府重臣オズワルド日伯友好病院院長(循環器専門)は「パンダミック(世界的な流行)が数十年に一度くらいの割合で、定期的に発生しているため、鳥インフルエンザが懸念されている」と見解を示す。
 ただ、死亡率の分母になっているのは報告件数。つまり何らかの症状が表れて病院で診察を受けた患者の数で、潜在的な感染者数はもっと多いとみるのが妥当だろう。実際の死亡率も下がるはずだ。
 別府院長は「数字だけに惑わされないで、冷静に対応していくことが求められるのでは」と語る。
 アジアや欧州での被害拡大を受けて、民間団体や政府などにより、各種防止・抑制プログラムが検討・実施され始めた。
 養鶏場現場責任者(65、サンパウロ市近郊)によれば、(1)養鶏従事者の衛生管理(2)鶏、アヒル、ガンソなど混合飼育の禁止(3)第三者の養鶏場内立ち入り禁止(4)野鳥の侵入を防ぐための屋根設置──などが関連団体から指導されているという。
 屋根設置は酷だと考える、養鶏業者が少なくない。かなりの支出を迫られるからだ。エスタード紙は、バストス地方組合の計算として、一羽に対して四レアルのコストがかかると報じた。一億羽いれば、四億レアルの投資になる。
 農業組合(MS)の日本人理事長は「もし鶏舎自体をつくり変えなければならなくなったら……。過剰な支出になり、出費を取り戻すことはできないでしょう。設備は今のままで十分だと思う」と明かす。
 政府は州をまたぐ鶏の輸送を禁止。鶏肉加工品に反応する機器を導入して、税関での取り締まりを強化するという。
 と同時に、病気の疑いのある患者について医師から関係当局、政府から国際機関への報告を徹底していく。ブラジリアやサンパウロの医療現場で既に、デジタル機器を使ってシュミレーションが実施された。
 では個人レベルで、鳥インフルエンザの感染防止に、何をしなければならないか。別府院長によれば、ウイルスは七十度の熱で死ぬ。そのため、食品は十分に加熱してから食べるのが望ましい。生で食べるのはよくないそうだ。
 鳥は糞便中にウイルスを排出。人間も鳥インフルエンザにかかると、下痢になりやすい。つまり経口感染の恐れがあるため、手をよく洗うことが必要になる。
 「治療薬タミフルは軽度の場合には有効ですが、重症になるとあまり効かない」と別府院長。一番の防止策は、ワクチンの接種だ。残念ながら、H5N1型に対応するものは、まだ開発されていない。各国で研究が進められており、ブラジル国内の研究所も取り組み始めている。
 国内で感染例はまだ、鳥・人ともにない。とは言え、安全だとも断言できないのが現状だ。インフルエンザが流行するのは冬季。ブラジルはこれからが正念場だ。備えあれば、憂いはないだろう。

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