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百歳をどう超えるか=連載(下)=定年後の生活維持が問題

健康広場

2006年4月19日(水)

 年金制度は一八八〇年代、ドイツで導入された。七十歳以上が対象で、当時の平均寿命は五十歳だった。現在国によって異なるが、六十歳~六十五歳で支給されるのが一般的だ。一方で人間は七十歳以上生きる。
 ブラジルで、六十歳以上が千七百万人。人口の九%を占める。応用経済調査研究所(Ipea)によると、二〇二〇年に三千八十万人に増加。人口比も一四・二%に達する。高齢者の生活をいかにして支えていくか。
 第三世代の雇用を増やしていくことが、解決につながるだろう。しかし年金制度を崩壊させることにもなり、抵抗もかなり多い。実際には年金だけで生活を維持するのが不可能なため、六十代のブラジル人の三分の一は労働を続けている。
 元教師のジゼーラ・モウチーニョさん(67)は、二十年前に定年退職した。「自分自身がくだらない人間になっていると思っていましたが、仕事を始めて生きていると実感している」。ピザ・ハット網の一店で販売責任者として契約。敏腕を振るっている。
 日本では、少子高齢化が進行。今後二十五年間で労働力が一六%減少するとみられ、各種企業が労働力の補充を考慮している。トヨタは高齢者に快適な生産ラインを設けた。
 ブラジルでは、ペトロブラスが高齢化にまつわる問題に注意を向けている。四千人の従業員が二〇一〇年までに定年する資格を保持する見込み。全職員の一〇%になる。
 「二〇〇〇年から、定年の条件を満たす人間の六%だけが退職した」とヘイトー・シャーガス人事担当重役。質の高い職員を失わないために、同社は年金についての指導プログラムを創設した。
 ブラジル企業で働く、労働者の平均年齢は九五年に二十九歳だった。コンサルタントのメルセールによると、現在は三十五歳。Ipeaのアナ・アメリアさん(人口学者)は「高齢化に対して、きちんと対処しなければ、高いつけがくる」と警鐘を鳴らす。
 社会保障の使い込みは、三百八十億レアルだ。次の十年間に何が起こるのか? 増大する医療費のコストも考慮しなければならない。「高齢者百人のうち十二人は介護が必要。一人で歩行、食事、入浴ができない」とアメリアさん。
 イギリス人学者アウブレイ・デ・グレイ氏といった、不老長寿を目指した研究も進んでいる。
 政府は二〇〇四年、医療向けに国内総生産の二%しか、回していない。生活環境が改善して、人間は長寿になった。様々な危機が、迫りつつあるのもまた事実だ。

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