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連載小説

わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇=(41)

 6 在伯沖縄青年協会の創立と  在伯沖縄産業開発青年隊代表の派遣移民青年隊の海外移住が実現したその実態を語る前に、「鉄の暴風」によってやきつくされて敗戦の虚脱状態の中から一部識者の呼びかけに応えて、部落あるいは村の青年団が結成されるようになり、間もなくして地区・沖縄全体の青年連合会(略称沖青連)が組織されていった。その活動と歩 ...

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わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇=(40)

 言葉は全然話せないままウチナーグチで手まね足振りしながらなんとか務めをはたした。  ところで、母にとっては偶然ながら6人の従姉妹がブラジルにいた。サンパウロの仲本の祖父さん、カミロポリスの玉那覇のばあさん方、ウッチンガの大田、パーリキ・ダ・ナソエスの照屋と大田のばあさん方で、皆戦前移民であった。  そして、いつも週末、月末にな ...

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わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇=(39)

 しかし、私にとってはまだブラジル一年生で生計も充分でないこれからという時代(1963年頃)だった。ところが先輩移民のこうした要請を蔑にすることは、特に青年隊移民で世話になって移住した自分にとって無礼は許されず、家族を説得し時々参加せざるを得ない立場となった。  ところが時を同じくしてわが住宅の建設も始まり多忙を極めていた。しか ...

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わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇=(38)

 同氏は市内中央区の自分の家でキタンダを経営しながら安定した生活を営み、日系人から生活上の依頼や要請があればそれに応えてくれる世話好きな性格と寛容さで、市内に住む県人たちからの信望を一身に受けていた。  1955年に在伯沖縄県人会サント・アンドレー支部が創立された際には、その中心的立役者となって奔走した。同氏は昭和8年(1933 ...

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わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇=(37)

 それで義弟実のフエイラに合流し共同でシヤカラ(農園)を経営することにしたのであった。それが大変好調であり約4ヵ年間も継続した。家族総出で植えつけた蔬菜の稔りを夜も明けぬ前から摘み取り、荷馬車に積んでフェイラで売りさばく労働は、働けば働くほど充実した結果をもたらした。  このような中で、姉のトヨ夫山城茂雄一家7名、及び妻千枝子の ...

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わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇 =(36)

 幸い小柳さんの鶏舎作りの手法を学びブラジル人耕地のユーカリ樹を買い受け伐採して家の柱に、更にボルクスワーゲン社工場より廃材の箱板をもらい受けたり、氏の手厚い厚意と支援で事はスムーズにはこんだのであった。謂いようのない感謝の毎日であった。しかし奥地で一農年働いて貰った6コントスだけが手持ち資金でありこれではどうにもならない。   ...

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わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇=(35)

 しかし自分自身商売は全然経験がないばかりでなく農業移民でブラジルにきて町住いとは道理が合わないとばかり思っていた。それでも呼び寄せ手続きが出来たので2週間程、義弟実のフェイラ現場を見たりしていると、県人移民のかなりの人々がフェイラに従事していることに驚いた。  しかしこの地球の反対側でウチナーぐちをはりあげてお客と対応し、当然 ...

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わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇=(34)

 とにかく旧移民は働きに働いてようやく今日を築いてきた。従って君たち新移民も理屈抜きに働くことこそ成功の基だ、と常に過重労働を強要していた。自分にとって働く喜びは充分理解しているし、夜明けと共に朝露を浴びて日暮れまで懸命に働いておりながら、そんな奴隷にでも言い聞かせるような下士官根性にはあきあきしていた。  丁度その頃一足先に着 ...

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わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇=(33)

 そして縁故もない未知のトッパンの嘉数家(小禄)に配耕されていた。嘉数家は、在伯沖縄協会トッパン支部長の具志堅彦昇氏に依頼し出迎えていた。ところがミラカツーの山城蒲吉(親戚)は私を受入れないが、同ミラカツー支部の日本語教師として引き受けるということで、支部長以下役員数人が引き受け実現を計って出迎えに来ていた。  私は、前述のよう ...

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わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇=(32)

 当日は陽春の日和りで、那覇港埠頭は見送りに駆けつけた人々で混雑し、その中に三和中学校の生徒数十人と先生方が大きな幟をはためかせて見送る風景はひときわ目立っていた。その脇間に千枝子と一也、母の姿がちらついて見え隠れする。暫くの間と云うイメージが頭を支配しているので、なんの寂しさも感じない。  むしろはるばる学校から見送りにきてく ...

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