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人気、猿の家族=閑静な住宅街に出没=日本人一家が餌付け=忘れると催促も

3月27日(木)

 サンパウロ市シャーカラ・サント・アントニオ区内の閑静な住宅街で、〃アントニオ一家〃が人気を集めている。手乗り猿の親子四匹で、朝夕の二回、同区内に住む、ある日本人宅に姿を見せ、バナナをねだる。通りかかった歩行者らが立ち止まって、興味深く見守っている。猿が出没するという話題が広まったせいか、捕獲を試みる人まで現れるという。この通りには治安維持のため、警備員が二十四時間体制で監視しており、外部からの客に注意を払っている。
 この日本人一家が三年前に、同地に移転してきた時には、既に猿の姿があった。近くにアメリカ総領事館があり、その敷地に住んでいるらしい。
 主人は、「テレビ番組はプラネッタ・アニマルしか見ない」というぐらいの動物好き。バナナを与えるうち家族に慣れ、午前と午後の二回、電線伝いに駆けつけてくるようになった。
 歩道に植えてある樹木の又にエサを置くことにしている。忘れていたなら、庭に入って窓の格子から内部をのぞきながら催促する。 この通りには、両側に三十軒が軒を連らねる。うち数件が同じように、猿の一家をかわいがる。
 三年前は四匹だったのがいつしか、つがいだけになっていた。興味本位で何物かが子猿を二匹とも持ち去ったのだ。
 その後、子猿が二匹生まれた。雌が最近また妊娠、子を産んだが、何かの拍子に木から落ちた。すぐに獣医に連れて行ったが、既に手遅れで数時間後に息を引き取った。
 「親から引き離すような形になったので、もう来ない」と、思った。次の日、いつもの時間に電線が揺れた。
 天候が悪かったり、戸外で大人数が集まっていたりすると、親子は姿を見せない。そんな日は、「何をしているのか、気になって心配になる」という。
 取材に対して新聞に掲載され住所が分かってしまうと、猿の平和が脅かされるのではないかと、匿名を望んだ。
 日本では、昨年多摩川をはじめとした河川に、アゴヒゲアザラシ(タマちゃん)が現れては話題が呼んだ。
「横浜市西区平松町帷子川護岸 ニシ タマオ」と住民登録。日本流行語大賞にも選ばれた。
 アメリカ総領事館が立地する場所はシャーカラ・サント・アントニオ区に属する。主人は、「区名にちなんでアントニオ一家とでも名付けたら」と、冗談めかす。
 〃アントニオ一家〃が区民の一員になる日が来るかもしれない?

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