ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

 近ごろマニフェストという語をよく見かける。本来は「宣言」の意味をもつのだが、敢えて日本語に直せば政党が掲げる「公約」に近いかもしれない。実例を示すと「自民党もマニフェスト策定へ」のように使う。尤もー。政策を掲げて財源まで示し実施する時期なども細かく明示するのだから、いわゆる「守られない公約」とは異なるものだの説もあってややこしい▼時事通信は「政策綱領」の訳をつけ担当者の苦労が滲み出ているのだが、こうした言葉の翻訳は難しい。明治になり欧米に学ぶために独仏や英語の邦訳をするために中江兆民らの先人たちは呻吟したけれども「哲学」なども、そんな翻訳語の一つである。それにしても、どうして今頃になってのマニフェストなのだろう。民主党が使い始めたらしいのだが、公明党も熱心らしい▼遅まきながら自民党も馳せ参じる気配だけれども、本来ならば「公約」で済むはずのものだ。それが横文字に頼らざるをえないのはこれまでの政治家に「公約破り」がいかに多かったかを物語っているに過ぎない。選挙ポスターには、夢の中で夢を見ているような壮大な政治公約が美辞麗句で刷り込まれる。もう明日からは天国を惜しげもなく語りつぎ喋る▼こんな空しい公約にうんざりは一杯いるし「守られない公約」に怒る人も多い。それならばと政党が考え出したのが外国語のマニフェストだとすれば、余りにも安易に過ぎないか。とは言っても、ここ暫くは新聞・雑誌や一番人気のテレビから「マニフェスト」なる珍妙なる語が流れるのは間違いない。 (遯)

03/07/17

image_print