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コラム 樹海

 「剣客商売」や長谷川平蔵が活躍する「鬼平犯科帳」などで洛陽の紙価を高めた作家・池波正太郎が急性白血病に倒れ卒然として逝ったのは平成二年であった。余りに突然のことでありファンは驚き仕掛人・藤枝梅安を懐かしがったりもしたが文化協会の生き字引だった安立仙一さんが、白血球の細胞を無秩序に増殖させる悪性腫瘍に冒されてあっと言う間もなく泉下へと旅立れた▼安立さんが文協に就職したのは一九五七年のことだから古い古い話だ。まだ今の文化センターがないときでリ広場のビルに文協が間借り暮らしのときであり「日本移民五十年祭」を始めコロニアの大きな行事の裏方に専心する人だった。その意味では良くも悪くも典型的な「能吏」であり冷徹なほどに事務方に徹し職人芸を最大に発揮した人物と評したい▼事務方の安立さんには三つの夢が持論のようであった。一つめが駐車場の建設。二つが文化センターの完成。第三が日系各団体の統合。三つめは実現には漕ぎ着けたものの実質的な活動となると難問が多いらしけれども、第一と第二は立派に成し遂げたし指導層の若返りも端緒についた。あの安立さんのことなので新しい夢が育っていたろうが、きっと大安心での退職であった▼移民として海を渡ってからの安立さんの半生は文化協会と共にあった。四十六年もの間ー有給休暇も取らずに仕事に明け暮れての毎日。これからはのんびりと少しゆっくり歩もうと考えていたろうにー本人もびっくりの奇病に取り付かれての逝去は無念だったに相違ない。行年七十二歳。合掌。 (遯)

03/08/19

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