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日系農家も恩恵をこおむっている=永井氏、野菜の改良すすめた人=トマテ、ピーマン、レタス=病害に抵抗性持つ品種開発

11月12日(水)

 岸本晟ブラジル野菜園芸学会会員(農業コンサルタント)は、十日、ブラジルのトマテ、ピーマン、レタスの改良者、永井洋農学博士(元カンピーナス農業研究所研究員=園芸部部長)の去る九月二十九日死去を明らかにし、追悼、業績を一般の人にも知ってほしいと述べた。永井農博は、小脳内組織の劣化による異常で死去、カンピーナス市のアカシア墓地に埋葬された。岸本氏は「日系人農業者も、関係の深い野菜生産の分野で、長い間博士にたいへん世話になっている。ブラジル農業界にも特別の足跡を残した人」といっている。
 農博の主な業績は――
 (1)カンピーナス農業研究所のトマテ分野での著しい貢献の一つは、六九年、永井博士により、野生種のトマテ「Yヴィルス」抵抗性遺伝子を発見後、育成されたトマテ・サンタ・クルス・タイプの「アンジェラ」種である。
 「アンジェラ」には「Yヴィルス抵抗性」「萎凋病抵抗性」「灰色斑点病抵抗性」「「石灰欠乏果抵抗性」「裂果抵抗性」の各遺伝子が組み込まれた。高い生産性、従来のサンタ・クルス・タイプより果実も大きかった。七六年さらに大型の「アンジェラ・ジガンテ」、八五年「ヴィルスTMV抵抗性」、「モザイク・ヴィルス抵抗性」「半身萎凋病抵抗性」「烈果抵抗性」の各遺伝子を組み込み、さらに大型、多収穫の「IACサンタ・クラーラ」種を発表した。
 (2)六〇年代、ブラジル中南部全域でモザイク・ヴィルスの被害要因によってピーマンが生産できなくなった。六一年品種改良に着手。新品種改良群は「アグロノミコ」と称された。六八年「アグロノミコ8」を育成発表。七一年に「ジャガイモ・モザイク・ヴィルスY」と「タバコ・モザイク・ヴィルスY」の新系統に抵抗性のある「アグロノミコ9」「アグロノミコ10G」育成を発表して問題を解決した。
 七二年、七三年、同病害抵抗性を持ち、大型で辛みのない「ピメンタ・アグロノミコ4」「アグロノミコ11」。八七年にはシロダニ、ラジャード・ダニに抵抗性を加えた「ピメンタ・ウバツーバ」を発表した。
 (3)七二年以前、ブラジルのレタスは国産品種、国内種子生産はなかった。モザイク・ヴィルスにはまったく無抵抗で、栽培農家は抵抗性品種の育成を熱望していた。それに応えたのが七三年に育成発表された「ブラジル48」。それ以来、ブラジル国産のレタス種子生産がブラジル種苗会社で行われるようになった。七七年「ブラジル221」「七九年ブラジル311」。改良点は早生化、大型化、均一化であった。
 ――永井農博は、カンピーナス農研で研究基金を使用できる研究者の一人で、アグロビジネスに直結する民間事業の指導を任命されていた。博士号取得後はハワイ大学、カリフォルニア大学、フロリダ大学などで共同研究、各種の国際学会に参加した。八四年、研究者の職階クラスの最高位第六級を得た。
 ■略歴■ 三五年東京生まれ、五四年ブラジル渡航、六一年帰化、同年リオ連邦大学農学部卒業、同年カンピーナス農研へ。六七年ルイス・デ・ケイロス農科大学より農学博士号、七五年カンピーナス大学講師、八四年技術部門理事、九六年退官。

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