2月4日(水)
一月二十九日午前六時に松原ホテルに集まった二十九人が、最新農業現場の視察に出発した。南米二十二農協が集まり、南米日系農協連絡協議会発足などの成果をあげた第四回日系農協活性化セミナー。締めくくりとして、オランブラ市の花卉栽培やセリ市場、コルデイロ・ポリス市の柑橘試験場、イツベラーバ市の綿花農場、グァイーラ市の大豆農場を視察した。四回の連載でその様子を紹介する。
サンパウロから北上しバスで二時間、花の街オランブラ市が見えてきた。オランブラはオランダコロニアの街として、近年では花卉栽培・流通で活況を呈していることで知られる。その原動力の一端は、一九八八年に建設されたセリ市場にある。
JATAKの資料によると、セリ市場建設当時の市場占有率は二九%、しかし、十二年後の〇〇年には市場占有率は四〇%に成長。日系人一人当たりの花卉販売額が、オランダ系一人当たり花卉販売額の、八分の一という著しい差を生み出している。一行は、ベーリンギ・オランブラ農業協同組合を訪れた。
「花卉を取り扱う農協では、ブラジルでもっとも規模が大きいのでは」と案内のルシアーナさん。四八年に組合が設立され、およそ二百九十の生産者が日々農協を訪ねる。四六%を固定客に販売し、残りがセリに。セリだけの売り上げは、年額一億三千二百万レアルだ。
セリ市場は仲買人およそ四百人を収容し、遠くはサンタ・カタリーナ州、リオ・グランデ・ド・スル州からも買い付けにくる。「北部からも、代理人を通じて訪れる事もある」と市場規模の大きさがうかがえる。
午前八時半にセリ市場を訪れたが、時既に遅し。午前七時に始まったセリは既に終わり、二、三の仲買人を除いて早々に退散していた。
セリ市場に来る仲買人は、もともとトラック運転手。農協で買い付けた花卉類の販売業者でもあった。現在は国中を駆け回る仲買人として活躍する。
セリ市場には机ごとに、コンピューターが接続され、一時間で三千カミニョンが処理される。カミニョンとは、およそ一×二×二(縦×横×高さ、単位メートル)の荷車で、これにぎっしりと花が積まれている。買い取った仲買人は、その日に現金で支払う。その後、自社のトラックに詰め込んで、めいめいの顧客に届ける仕組みだ。
生産者は、セリで販売されたその日に現金を受け取る。一行の宗友夫理事長(ピラール・ド・スール南伯農業協同組合)は「セアザ(サンパウロ州中央卸売市場)などは、オランブラと違って現金決済でない場合もある。そのため、踏み倒される事もしばしば」と漏らす。「カミニョンに花卉を載せたり、冷蔵庫に保存したりと経費は高いが、金の払いがいい」のがオランブラの魅力のようだ。
生産者は、オランブラを中心に、アチバイア、イビウナの日系農家もいる。審査は厳しく、入会金一万レアルに加えて、最低限度の生産量、設備、製品も審査の対象になる。コンスタントな生産能力の有無を調べるため、六ヵ月の試験期間もある。
一行は、花卉生産者農家と柑橘類試験所に向かった。 (佐伯祐二記者)