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デカセギ支援、力強い存在=母語・継承語バイリンガル教育=研究会立ち上げる=中島教授=言葉で落ちこぼれないように

2月13日(金)

 バイリンガル教育の権威とされる中島和子名古屋外国語大学教授らが中心になって、「母語・継承語バイリンガル教育研究会」が昨年八月に、日本で設立された。在日ブラジル人子女を対象にした言語調査などもカバー。デカセギ支援に力強い存在になりそうだ。汎米日本語教師研修で講師としてアルゼンチンに招かれ、帰途、ブラジルで講演を行った同教授に話を聞いた。
 日本語教育学会春季大会(二〇〇三年度)が昨年五月、国立市(東京都)の一橋大学で開かれた。中島教授をはじめ佐々木倫子氏(桜美林大学)、津田和男氏(国連国際学校)、向野也子氏(Portlando State University)、湯川笑子氏(京都ノートルダム女子大学)の五人が「もう一つの年少者教育」と題したパネルディスカッションを行い、継承語教育の課題を探った。
 継承語とは親から受け継いで幼い頃に使っていた言葉を意味する。海外には百年の歴史を持つ日本語教育が存在するものの、日本ではあまり研究されていない分野。継承語という言葉自体がまだ、定着していない。
 約二百五十人が集まり、この学会だけで議論を終わらせるのはもったいないということで、研究会の立ち上げになった。
 中島教授は小学校に通う在日ブラジル人子女百四十六人に対して、ポルトガル語の読解力調査を実施した。半数は母語が読めなかった。「子供たちのレベルに合わせてテストを作成しただけに、結果にショックを受けた」。
 日本語が理解出来ないと学校でイジメにあったり、教諭からも認めてもらえないという学習環境が母語を早く喪失してしまう背景にあるようだ。
 もちろん、日本ではブラジル人学校が経営されている。「落ちこぼれが入ってくる場所」になってしまい、しかも、ブラジル式一辺倒のやり方。だから、「教育的には貧しい」状態だ。中島教授は、ここでこそ日伯両語を使ったバイリンガル教育を行うべきだ、と提唱する。
 支援の方法には直接・間接の二通りが考えられる。相談員の配置など直接的な方に偏りがち。保護者の啓蒙や教育者の育成といった間接的な面にも目を向けてほしいところ。
 「日本の学校は日本人だけでは教育出来ない時代を迎えた。だから、門戸を開いて(海外から)よい教育者を入れて欲しい」
 第三回目の研究会は今月十四日、名古屋外国語大学で開かれる。湯川氏を講師に迎え、ワークショップを行う。
 テーマは「母語喪失を語るための基礎知識」。「母語喪失とは何なのか」、「どのような理論的な枠組みを使って喪失を探るのか」など五項目が内容に盛り込まれる。ゆくゆくは研究会を学会レベルまでもっていきたい考えだ。

 

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