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「自然と闘ってもダメ」=柿の木枯死の原因究明=農拓協

11月11日(木)

 昨年、パラナ州で柿の木が大量に枯れ話題を呼んだが、南伯農業協同組合中央会に勤めた経験のある農業技師の中西徹さん(51)は、太陽光の強さが増したこと、温度が上昇したこと、セッカ(乾季)が長くなったことなどが原因と指摘する。
 十日、力行会会館でブラジル農業拓植協同組合中央会(原林平会長)の会員ら約十五人を前に自身の十五年に及ぶ、落葉果樹に関する研究成果を発表した。
 緑葉には(1)光を利用し炭水化物を作る光合成、(2)その炭水化物をATPなどのエネルギーに変える呼吸、(3)「光の呼吸」と呼ばれる炭水化物を消費するだけの呼吸、の三つの活動がある。従来は(3)を(2)の量が上回っているが、先の理由が原因で(3)の比率が増加。結果、木(葉)は栄養不足となり、弱く病気に掛かりやすくなる。また、生産不安定や質の低下も招くことになる。
 パラナの場合も、通常は害を与えないアントラキノーズ(炭素病)だが、柿木が弱っていたため悪影響を及ぼすに至った。ATPを生産する能力が低い柿の木はもろに影響を受けた形だ。
 中西さんはJICAの開発青年制度(第一期生)で果樹専門の農業技師として来伯。南伯に勤めロンドリーナで研究を行った。約十五年前から独立し、独自にブドウなどを生産し研究を行ってきた。
 ブドウの匂いが弱く、色付きも悪くなってきているのをウイルスが原因と考え、研究に六年を費やしたが、色も匂いも回復せず、「ウイルスだけじゃない」と気づき、試行錯誤の末、「光の呼吸」にたどり着いた。
 「人と自然が闘っても話にならない」という考えにたどり着いた。つまり、自然の作用や現象に反して「いくら肥料をやったり農薬を撒いたりしても駄目」と気づいた。
 その対処法として、「陽がよくあたっている葉は機能が低下していると思ってください」と注意を促した。光が少しだけ当たるような予備枝(隠葉)を作ること、地面からの照り返しを避けるために木の下の草を抜かずに熱を吸収させること、そしてそれらの作業を行いやすくするために木を大きくしすぎないことを提案した。
 「今の私にはそこまでしか分からない」と語り、熱を畑から逃がすためのさらなる研究の必要性を訴えた。最後に、専門家、研究者が「光の呼吸」を詳細に調べるために、農拓協に更なる協力を求めた。

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