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県人会から世界へ飛躍=シリア系コミュニティとクルーベ・ホムス=連載(上)=中東との貿易振興図る=宗教でアラブ語教育

12月10日(金)

 パウリスタ大通りにあるクルーベ・ホムス(Clube Homes)と言えば、サンパウロ市在住者の大半が知っている富裕層向けのスポーツ・クラブだ。実はここ、シリア国ホムス県出身者が作った親睦団体が前身。いわば、シリア系移民版の県人会だ。来年五月、ブラジリアに中東のアラブ系諸国の経済団体代表と北南米全体のアラブ系コミュニティ代表が集まって、貿易振興を話し合う経済会議が予定されている。今回、そのコーディネーター役を務めるのはオムスだという。県人会から世界へという動きがどうして可能だったのか、同クラブのレスカラ・トゥーマ顧問評議会会長(三世、76)に尋ねた。

 ホムスの地階奥のレストラン・ボヴィーヌスに入った人は多いが、入り口ホール右手のカトラッカから先、会員のみの領域に入った人は少ないだろう。
 ゆったりとしたホールに各種ソファ、椅子が並ぶ。ホールを囲むように、シリア国旗とブラジル国旗などが掲げられた特別な来賓用の迎賓室、アラブ伝統の家具を配置したサーラ・アラビ、アラブ世界専門の図書館(三万冊のうち二万冊がアラブ語)などが配置されている。
 館内の案内役を買ってでたトゥーマ会長は、元会長だけが所属する顧問評議会の中の会長で、執行部が決議した内容はここの承認を得ないと実施できない仕組み。かなりの権限を持っているようだ。
 一年前、昨年の十二月にルーラ大統領が、国内の批判勢力を押し切って中東諸国を歴訪したことは記憶に新しい。トゥーマ会長は「あの時、コミュニティの企業家百二十七人も同行し、大いに経済交流の仲介をしました」という。
 四年前、中東諸国とブラジルの貿易額は十五億ドル程度だったが、今年は四十億ドルの見込みだそう。来年五月開催予定の中東・北南米アラブ系経済会議では、〇八年に八十億ドル達成を目標にした話合いが行われるという。
 ちなみに、〇三年現在の日伯貿易額は四十八億ドルで、ここ数年間大きな変動は見られない。つまり、来年ぐらいには追い抜かれる可能性もありそうだ。
 トゥーマ会長によれば、ブラジルのアラブ系コミュニティは千二百万人いるというので、ブラジル全人口一億七千万人の約七%を占める。その中心となるのがシリア系の約七百万人、リビア系の約五百万人で、わずかにパレスチナ人、イラク人などがいるという。
 宗教は、アンティオキアのシリア正教(キリスト教)、地下鉄パライーゾ駅上の教会が有名だ。もしくは、イスラム教で、エスタード通りにあるブラジル最大のイスラム寺院セントロ・イスラミコを中心に全伯各地に寺院(メスキッタ)を持っている。
 会長は、「教会の中では一〇〇%、アラブ語でお祈りをあげます。一部、アラブ語が達者でない青年層向けのものはポ語も使いますが。サンパウロ州内だけで三十のアラブ語学校がありますが、その大半は教会によって運営されているものです」と説明した。
 各地の文協が中心になって日本語学校を経営する日系とは、だいぶシステムが違うようだ。
 もちろん、ホムスでもアラブ語教室が開催されているし、アウグスト街にはシリア・アラブ文化センター(セントロ・クルトゥラウ・アラビ・シーリオ)という、シリア政府が全額出資して運営する施設があり、アラブ語コースには四百人の生徒が通っているという。国際交流基金のシリア版だろうか。
 その他、USPにもアラブ語コースがあり、日系人も多く学んでいるそうだ。
 やはり、シリア系移民史を研究する機関として、アラブ系ブラジル文化研究所(Instituto de Cultura Arabe Brasileira=ICAB)がある。人文研のシリア版のようだ。    つづく

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