ホーム | 日系社会ニュース | 50周年 総予算は376万R$=文協評議員会=承認受け正式スタート=やり繰り苦しい通常会計=赤字減だが黒字も激減

50周年 総予算は376万R$=文協評議員会=承認受け正式スタート=やり繰り苦しい通常会計=赤字減だが黒字も激減

12月14日(火)

 ブラジル日本文化協会(上原幸啓会長)は十一日、第百二十七回定期および臨時評議員会で審議した結果、本会計とは別に設置されることになる五十周年記念事業の総予算は三百七十六万九百六十レアルと、昨年度の通常収入約二百四十万レアルに比較して四割増という野心的な金額で承認され、正式にスタートすることとなった。記念講堂の改修や「日本文化の影響」展など、百万レアルを超えるプロジェクトが予定されるため、このような大型予算となった。

 評議員会では来年度通常会計分や五十周年記念事業分の事業計画案と予算案が審議、承認された。
 五十周年記念の記念講堂改修事業に関しては、十年以上使い続けるという証しを見せれば、費用百二十万レアルを提供しても良いという日本企業があり、今回の承認により、実現に向けて一歩踏み出した。
 また、文協内と同時に、サンパウロ市の有名美術館でも開催する予定で、百十六万レアルの予算を組んでいる展覧会「日本文化の影響」についても、ルアネー法の適用がほぼ確実という見通しがついているそう。この二つだけでも実現すれば、五十周年にふさわしい大型事業となりそうだ。
  ◎    ◎
 今年度十月までの通常会計の総収入は約百六十五万レアル、支出は約百五十万、残高は約十五万。来年度の予算案は収支ともに一〇%増しで計算され、収入が約百八十五万レアル、約支出が百八十三万レアルで予定黒字はわずか約二万レアル。
 通常会計では、今まで〃双子の赤字〃と揶揄されてきた国士舘大学スポーツセンターと移民史料館の赤字額が減るなど、改善された点が強調された。また、日本語講座を六月に日伯文化連盟に無償譲渡したため、来年度事業計画からは消滅した。
 山梨県人会長の高野隼士評議員から、日本語講座の黒字分の減少をどう補うのか、との質問があったが、和田副会長は「収入もあったが支出も多かったので、プラスマイナスはあまりない」と回答した。
 事実は少々違うようだ。同講座は、今年前半の収入が約二十六万、支出が二十二万で、四万レアルの黒字を生んでいた。もし通年なら八万レアル。日本語講座の黒字を抜いた十月までの黒字残高が約十万なので、いかに同講座が稼ぎ頭だったかが分かる。
 この収入を補う財源はなく、その分、来年度の残高が七分の一以下に激減しているが、その件について問題にする評議員はいなかった。
 同時に、百周年記念事業に入らず事実上、活動を停止していた日伯学園検討委員会も正式に無くなった。
 サンタクルース病院理事長の横田パウロ評議員からは、「文協は文化団体として、もっと移民史や日本文化研究に力を注ぎ、本の出版などを積極的に手がけるべき」との意見が出された。
 その他、「リベルダーデ文協ではなく、ブラジル文協なのだからその名に恥じない全伯に呼びかける活動をどんどんした方がよい」「議論している内容の視野が狭い。年に一回でなく、何回も開催し、日系社会を盛り上げる議題を話し合うべき」などの声が出た。

文協INSS問題
差し押さえ寸前?!
90万R$分の担保を設定か

 十一日行われた文協の第百二十七回定期および臨時評議員会では、INSS(国立社会保障院)罰金問題も話し合われ、同院の監督官(フィスカル)が九十万レアル分の差し押さえを、今にも執行する危うい状態にあることが報告された。会長ら執行部に対し、緊急時にはどの物件を担保として指定するかを決める権利を、この問題に限って委譲することも承認された。
 文協が、国家社会保障審議会(CNAS)から慈善団体登録(Certificado de Entidade de Fins Filantropico)を剥奪されたのは〇一年四月だった。慈善団体登録によって各種税金や年金などの支払いを免除されていたが、この剥奪を受けてINSS監督官が査察し、百七十九万レアルの罰金を通知した。
 監督官の主張では、今年六月まで文協が経営していた日本語教室の教師が正式な雇用登録をしていなかったなどとし、その分の雇用主負担分のINSSなどを罰金として通知していた。
 文協は、法律事務所と契約し、「憲法で保証された既得権の侵害である」として連邦裁判所に提訴し、現在審議中だが、判決がでるまではまだ数年かかると見られている。
 それが、利子などで膨らみ既報どおり二百万レアル以上になっている。三カ月前、そのうちの九十万レアル分の差し押さえに関して、監督官が来て話をして行った。「いつ差し押さえをされてもおかしくない状況にあり、その時に備えて、権限を執行部に委譲する必要がある」との判断で今回の話し合いとなった。
 監督官が差し押さえを執行すれば、四十八時間以内に担保を提供しなければならない。最悪なのは、万が一、文協の銀行口座を封鎖されること。日常の活動ができなくなるからだ。一方、土地や建物を担保にすれば、文協役員を管理責任者に任命してもらい、今まで通りある程度自由に運営することができるという。
 現在、担保の候補となっているのは「国士舘スポーツセンター」などの郊外に所有する土地で、文協ビル以外の物件だ。
 「今後も次々と、同じような差し押さえが来るのか?」という出席者からの質問に、評議員会の大原毅会長は「そうだ」と答えた。
 「その道の経験者や、有力者にお願いして政治的に解決するのが現実的だ」「これは日本人としての信用問題だ。州や連邦政府の団体とはまじめに解決すべき。九十万ぐらいならきちんと整理すればいい」など、さまざまな意見が表明され、熱心に議論された結果、委譲が決議された。
 昨年四月に理事全員が入れ替わる形で就任した現執行部。以前から受け継いだ〃負の遺産〃を処理するため、現執行部は昨年五月、伝田英二副会長をトップとする人事委員会というINSS問題対策部署と立ち上げ、専門のコンサルタント会社と契約して、慈善登録を戻すための検討を続けている。伝田副会長は一カ月半前から体調を崩し、文協の仕事から遠ざかっている。

image_print