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ルーラ大統領訪日の成果は=連載(2)=デカセギ子弟の教育=10月、日伯両政府で意見交換

2005年6月3日(金)

 デカセギ子弟は日本語で教育するべきなのか、それとも、ポ語なのか――。
 今回の日伯首脳会談では、国連改革での協力、二国間関係を新しい段階に進めること、エネルギー分野での協力関係の構築などを中心に話し合われたが、デカセギ子弟の教育問題についても「在日ブラジル人コミュニティに関する共同プログラム」の中で発表された。
 デカセギ子弟の教育問題を扱う意見交換を今年十月に東京で開くなど、両国政府が積極的に取り組んでいくことを確認した。教育改善と日本社会への適応強化を目的に、日本語教育を一層推進するという。
 日本側としては当然、日本語教育を推進する方向を打ち出したが、ブラジル側のデカセギ支援団体では日本のJETプログラムなどを使ってポ語教師を在日ブラジル人学校へ派遣したい希望を持っており、この辺の調整が今後行われそうだ。
 将来、デカセギたちがブラジルへ戻るのであれば、ポ語が必要だろうし、そのまま日本へ定住化傾向を強めるのであれば、ポ語中心に教えることはむしろ日本への適応を遅らす弊害を及ぼす可能性がある。デカセギ本人たちの意向も踏まえた、バランス感覚のある議論が必要な課題だ。
 最終日の五月二十八日、在名古屋ブラジル総領事館で大統領は、群馬県や愛知県、滋賀県など全国にあるブラジル人学校の校長ら三十五人と懇談。校長らはブラジル人学校の増設の必要性、ブラジル政府からの奨学金などを訴えた。
 同二十八日付け共同によれば、そのすぐ後、在日ブラジル企業などが主催するエキスポ・ビジネスに立ち寄った大統領は、演説の中で「学費が払えないために、在日ブラジル人の子供が不就学に陥っているのは、我々にとって残念なことだ」と指摘した。
 さらに、日本の学校に通うブラジル人児童についても「彼らが受けられる教育の質が向上するよう、日本の政府と話し合っていきたい」と述べ、両国間で教育関係者の人材交流を活発にするなどの改善策を日本政府に働きかけていく意向を示した(共同)。
 同二十八日付け国営ブラジル通信によれば、日本国内の伯人学校は六十三校で、うち三十六校がブラジル教育省の認可を受けており、全部で約八千人が学んでいる。一万五千人が日本の学校に通っており、一万七千人が不就学の状態だという。伯人学校は私立なので月謝が高く、なかなか生徒を通わせられない。ブラジル外交筋は、就業しない子弟の犯罪が増加する問題があると指摘した。
 問題は、どちらの言語でも教育を受けていない不就学子弟だ。
 デカセギ子弟の教育問題に詳しい中川郷子さん(心理学士)は、「十二歳ぐらいまでにたくさんの語彙を身につけておかないと抽象的、論理的な思考ができなくなります。どの言葉でもいいんですが、まずは基礎をしっかりすることが大事です」と本紙の取材に対し強調した。
 とすれば、費用の高いブラジル学校へ通えない子どもや日本定住を決めた家庭の子どもなどは、積極的に日本の学校へ取り込み、まずは日本語でしっかり教育を受けさせる。その上で、将来的にはポ語も学べる選択肢がある環境を整備する必要がありそうだ。
 逆に、帰伯を前提にした家庭の場合、今以上に在日ブラジル学校での教科内容を充実させ、しっかりと論理思考のできるところまで教育する必要がある。これはブラジル政府側の責任になりそうだ。その上で、日本語も学べる選択肢を用意する。
 中川さんは「日本語もポ語も、日常会話はできても教科書は読めないという子どもが多い。どっちつかずのセミリンガル。やはり、アカデミックな世界にも十分通じるような、本当のバイリンガルの子どもを育てることを目標に、今後の議論を進めてほしい」との期待を語った。
 バイリンガル子弟が、これから数千、数万人生まれてくれば両国関係は間違いなく大きく変わる。
 もしかしたら、デカセギで空洞化したといわれるコロニアに、新しい風が吹き込むかもしれない。今年十月に東京で行われる政府レベルの意見交換会でどのような方向性がでるのか、両国から注目されている。
 今回の共同プログラムを端緒に、日伯新時代が生まれる可能性すらはらんでいるといえそうだ。
(つづく、深沢正雪記者)

■ルーラ大統領=訪日の成果は=連載(1)=日本移民とデカセギ=対等に位置付け

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