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ボリビアでJICAが支援活動=出産ケア向上目指して=連載(中)=女性の立場を尊重し=研修人気、成果に手応え

2005年9月17日(土)

 「伝統的な智恵に勝るものはないとつくづく感じている」と語る毛利専門家。 女性が主体的に生む「アクティブ・バース」の先駆けともいえる毛利助産所(神戸)の副所長であり、伝統的な出産方法にも詳しい。
 ボリビアでの伝統的産婆(TBA=Tradicional Birth Atendant)は薬草茶などを与え、マッサージ、寄り添って話を聞くといった方法を取る。
 現在でも、僻地などでは産婆がおらず、ベッドの脇にひざまづき、羊毛などの上にまさに〃産み落とす〃という方法が取られているという。
 落ち着く場所や家族などの存在が産婦にとって精神的に大きな支えとなる。この原則は国、文化を問わない。さする、温かい飲み物(薬草茶、味噌汁、チキンスープなど)を飲ませるといったケアは万国に共通している。
 「お産の八割は問題なく生まれるが、残る二割が病院での対応が必要。日本の助産婦レベルだと九五%まで正常出産の状態にする」
 毛利専門家によれば、中南米諸国における出産方法の特徴は、かつてのアメリカのケアゼロの方法を踏襲しており、技術や認識が大きく立ち遅れているという。
 ブラジルでは看護学部終了後、一年の助産婦コースがあるだけだったが、ようやく今年、USPに助産学部(四年間)が創設されている。
 チリは五年教育で百年の歴史があるが、会陰切開率は九五%と高く、世界の流れからは取り残されている形だ。
 世界最貧国といわれるボリビアには、各国の援助機関が軒を並べるが、EBM(科学的根拠に基づいた医療)とケアを結びつける支援はなかった。と毛利専門家はいう。
 その意味でJICAがソフトの面でプロジェクトを立ち上げたのは、画期的なことといえる。
 昨年四月からスタートした研修も、現在では百人を超える医療関係者が参加している人気ぶりだ。
 「女性の体験から、女性の立場で、女性が何を欲していたか」を考えることから始まる研修では、ケアを劇化、問題点の議論、その科学的根拠を考えるといった分かり易い形で進められる。
 産痛を緩和するマッサージの演習、女性の選択によるフリースタイルの出産介助法なども取り入れる。
 実際に、保健センターで妊婦検診を受けている体験者の声を聞き、男性医師が腹部に重しをつけて歩くといったシチュエーションも行う。
 「女の人がいかに心地よくいられるかを考える」視点から、暖かく、点滴を受けやすく、子供を抱き易い妊婦服を開発、既に現場で活用されている。
 アイデアを提供する場ともなっており、「『やってみたらよかった』という医療者の声を聞くこともある」と田中チーフアドバイザー。
 プロジェクト発足直後の〇四年五月から七月の調査時、百%仰臥位での出産が行われていたが、一年後の現在、四つの母子センターでは、約二五%の産婦が自分で選択した姿勢での出産をしている。
 ルーティン化していた会陰切開も四十五%だったものが、三十三~三十六%に減少。
 出産時の家族の立会いはわずか十%だったが、七五%まで上がるという劇的な変化を見せている。
 研修の成果を「手応えを感じている(田中、毛利)」。これから研修では医療者のニーズや助産婦の立場も考えるケアを模索していく考えだという。つづく   (堀江剛史記者) 

■ボリビアJICAが支援活動=出産ケア向上目指して=連載(上)=母子死亡率の改善へ=人間的なお産文化を啓蒙

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