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《解説》変革なるか百周年――一世取り込み委員会再編へ=御三家訪日を絶好の機会に

2006年9月2日付け

 ブラジル日本移民百周年協会執行委員会の委員長に松尾治氏(県連会長)が就任した。三十一日午後五時から行われた執行委員会で上原氏は引退を発表、遅れて会議に出席した松尾氏は「緊急に進めていきたい」と決意を述べた。
 関連の報道を続けてきたが、読者から「執行委員会とは何なのか」という声がいくつか寄せられた。同委員会発足の経緯と役割を振り返ってみたい。
 堀村隆彦・元大使の「加速の年」の掛け声を受け、遅々として進まない百周年事業を推進する目的で今年三月十八日の理事会で「執行委員会」は設置されている。
 文協、県連、援協、日文連、商議所の日系五団体、日系研究者協会、サンタクルス病院、アルモニア教育センター、ノロエステ連合の記念四事業主催団体、日本カントリークラブ、ブルーツリーホテル、青年会議所、下本八郎元州議らのメンバーからなる。
 第一回会合では「総額百二十億円にも上る記念四大事業を棚上げし、祭典行事を最優先」と決議。〃閣僚会議〃のような役割が期待されていたが、以降、月二回の会合を開きつつも、大きな動きが見られないのが現状だ。
 協会の定款にない組織のため、〃超法規的〃権限を発揮して事業推進化を図ることも予測していたようにも思えるが、委員会発足を提起した渡部和夫は、「イメージとしては執行委員会と理事会は二院議会制度のような関係」と説明、『協会の最高機関』(遠山氏)との認識も否定しない。
 「大きな失敗だった」と認めるのは、委員会内の決定事項ながら、リーダーシップを発揮しない上原幸啓氏(協会理事長)が委員長になったことだという。
 権限を持たせたにも関わらず、理事長の上原氏をトップに置いたことで「裁断を委員長に仰ぐような雰囲気になってしまった」。
 周知のとおり、上原氏は自らが決断することを嫌う。文協の会議が紛糾しても取りなしたり、代替案を提案するといったことは一切行わず、沈黙を守るのみ。このような強権を発動する性格を持った委員会の長が務まるはずもない。
 対日本への感覚も鈍感と言わざるを得ない。総領事館から「箱モノは難しい」と再三通達を受けているにも関わらず、棚上げが決まった四大プロジェクトを入れた予算案を提出、しかも期限が過ぎていたことは協会関係者からも怒りを通り越し、諦めの声まで聞こえてきたほどだ。
 このような状況を受け、「これでは百周年が潰れてしまう」と危機感を抱いた渡部、遠山両氏が引導を渡し、新執行委員長の松尾氏が協会内の委員会再編や人事に大鉈をふるうことになった。
 こういう経緯から見ても、〃新体制発足〃と見ていい。
 松尾氏は「委員会人事には一世を起用することを考えている」と話す。昨年の文協選挙以来、完全に百周年から乖離してしまった戦後移民に協力を呼び掛ける考えだ。もちろん現体制との調整役も自任している。
 兵庫県で開催される国体からの招待もあり、コロニア御三家に加え、百周年理事長、執行委員長が今月同時に訪日する。百周年を二年後に控え、この機会を逃がす手はない。まだ遅くはない。
 松尾氏の訪日は今月十一日。来月三日に帰国する。離伯までに委員会再編の調整を行うという松尾、遠山両氏にとって長い十日間になりそうだ。

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