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南米から60人を招待=兵庫県=のじぎく国体が開幕=震災支援への感謝込め

2006年10月4日付け

 【兵庫発】「こんな素晴らしい舞台に招待してもらって感無量です」。天皇皇后両陛下のご臨席のもと、九月三十日午後に神戸ユニバー競技場で行われた「のじぎく兵庫国体」開会式に、県庁の招待で出席したブラジル兵庫県人会の尾西貞夫会長は満面に笑みを浮かべた。十一日間に渡る日本最大のスポーツの祭典は幕開けを祝った。
 第六十一回国民体育大会は、五十年ぶり三度目となる。十一年前の阪神・淡路大震災時に日本国内から寄せられた支援に感謝の気持ちを伝えるため、大会スローガンは「〃ありがとう〃心から・ひょうごから」。
 ブラジルなどの南米からも寄付金が集められたこともあり、今回、南米の県人会から六十人が招待された。ブラジルからは四十人、アルゼンチン十五人、パラグアイ五人。
 式典前演技では、県内の若者千五百人や宝塚歌劇団宙(そら)組が五カ月かけて練習をつんできたグラウンド一杯を使った舞を披露した。小屋のように大きなブロックを組合せながら、震災による破壊と再生を見事に表現し、会場を埋め尽くした約四万人の観衆に混じって、南米からの一団も惜しみない拍手を送った。
 ブラジルから参加した北山セルジオさん(〇三年の県費留学生)も「あれだけの人数がピシッとまとまっていてすごい」と興奮さめやらぬ様子だった。
 式典が開始すると、各県選手団の計八千百人が次々に入場。色とりどりのユニホームの花がグランド全体に咲いた。
 井戸敏三兵庫県知事による「復興への感謝する国体」との開会宣言に続き、日本体育協会の森喜朗会長(元首相)、伊吹文明文科相、県議会議長、神戸市長らが挨拶。
 天皇陛下も「六千四百四人の命が失われた大震災から十一年。復興への支援をしてきた全国の人々への感謝を込めて開催されることは極めて意義深い」とお言葉をのべた。
 会場では、五輪の聖火にあたる炬火(きょか)が競技場最頂部の炬火台に点火された。
 両親が兵庫県出身で、クリチーバ市在住の本庄レオナルド文彦さん(二世)は「素晴らしい式典。オリンピック以上に見える。初めての日本でこんなに見事なものが見られるとは思っていなかった」と喜び、招待されたことへの感謝をのべた。
 兵庫県ブラジル事務所の山下亮所長(クリチーバ在住)は「ブラジルでも二十六州持ち回りでこのような大会ができたら、国民の交流がもっと深まるのにとしみじみ思いました」という。
 一行には上原幸啓文協会長、松尾治県連会長、酒井清一援協会長らも参加した。
 百周年執行委員長に就任したばかりの松尾会長は、式典後のマスゲームに特に感動したという。「こんな素晴らしい式典やアトラクションがブラジルでもできたら最高なんですが。大変参考になりました」と語り、二年後に向けて意欲を燃やしていた。
 一行は九月二十八日に日本入りし、三十日の開会式に出席したほか、翌一日には世界遺産姫路城や、世界最大のつり橋「明石海峡大橋」、旧移民収容所(移住センター)、かつて移民が出発したメリケン波止場などを視察。二日には日系人セミナーに参加、夜は知事主催の晩餐会に出席した。
 上原文協会長は神戸移住センターで、「一九三六年十一月、私もここで一週間研修しました」としみじみ思い起こした。現在は移民資料館、関西ブラジル人コミュニティ、芸術家集団によって使用されている。「懐かしいですね。絶対にここを潰すようなことには反対です」と思いをあらたにした様子だった。

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