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二宮さん、盛和塾全国大会で=中小零細企業経営の最優秀賞=従業員教育を徹底=目的、目標を共有して=イハラブラス=「ぼろ会社」建て直す

2006年10月7日付け

 ブラジルを代表して日本へ、そして盛和塾全国大会体験発表会で最優秀賞受賞――イハラブラス化学工業株式会社社長、二宮邦一さん(71、二世)は、去る九月十九、二十日に京都で開催された盛和塾の第十四回全国大会で体験発表を行い、五十七塾、約四千人の中小零細企業経営者の頂点、最優秀賞を受賞した。
利益率一パーセント程度だった「ぼろ会社」を、十二年間で売り上げ約十一倍、利益率一七パーセントにまで上げた二宮さん。「従業員全員が目的と目標を共有し、ベクトルを合わせて目的達成を目指した業績が評価された」。
 同氏は、同塾の製造部門売り上げ一億ドル以上で稲盛経営者賞も受賞しており、ひとつの大会での二冠獲得は初めて。
イハラブラスは、一九六五年に一〇〇パーセント日系資本で設立された企業だ。農薬の生産および販売をするために、輸入、開発、登録までの一連の業務を手がける。
七八年、会社売却の危機を迎えたが買い手が見つからず、八四年に苦肉の策として、日系人グループが受け皿会社を設立して事業継続を決めた。「特に、従業員のモラルの低さが問題でした」と二宮さんは当時を振り返る。
六四年からの十一年間、コチア産業組合で購買部再建に従事。「大学を出たばかりで大した経験もなかった自分にとって、実に大変な仕事だった」。
再建の目的がほぼ達成されたので退組。農業消費財を販売する会社の経営にあたったのち、八四年からイハラブラスの代表となった。
 「どうしたら従業員が会社のために働いてくれるのか」。代金回収の目処が立たないにも拘らず、高い報酬を受け取る営業マン。言葉の問題や労働条件の違いから働く意欲が低下している工場従業員ら。
 「充分な利益を出さない会社は『ぼろ会社』」。九四年に盛和塾に出会い、稲盛和夫塾長(京セラ、KDDI創立者)の言葉に胸を衝かれた。
 九三年の売り上げは千百万ドル。利益率一・五パーセント。「生きるか死ぬかの瀬戸際にあった当時、最も重要だったのは、発想の転換でした」。
 売り上げ、利益、経費に関する明確で厳しい目標を設定すると同時に、従業員教育に力を入れた。
 一週間かけての新人研修プログラム。既存の従業員には学習グループごとに、経営理念を説いた本の読み合わせなど。
 「工場の末端レベルに到るすべてを相手に確固たる姿勢」で盛和塾の理念の教育を行った。「従業員の姿勢は変わりました」と二宮さん。
 〇四年の売り上げは一億ドルを超え(一億二千万ドル、約百三十六億円)、利益率は一七パーセント。
 「ブラジルの農薬業界では小規模の会社です。マーケットシェアを今の三%弱から、五、六%に持っていくのが当面の目標です」。
 九月二十八日に行われた盛和塾ブラジルの受賞祝賀会で、「評価されて終わりでなく、これから何をしなければならないのか、という宿題をもらったように思う」と意欲を見せた。今年末でイハラブラス社長を引退し、今後はバイア州でトマトの栽培を行っている企業の経営に力を入れると話した。

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