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秋田県が敬老金を廃止=緊縮財政のしわ寄せか=奈良は昨年、宮城も08年に?

2006年11月8日付け

 三十年近く続けられてきたのに――九月半ば、秋田県人会(石川準二会長)宛てに母県から、敬老祝い金の廃止を伝える文書が届いた。十二月の敬老会に向け準備を進めているところだっただけに、突然の通知に県人会役員らの困惑も大きい。四十七都道府県中、奈良県の敬老金は昨年廃止になり、現在、制度が続いているのは宮城県のみ。その宮城でも「〇八年で打ち切り」との話が出ているという。百周年を間近に控えた時期に続く都道府県の敬老祝い金廃止。地方自治体の緊縮財政の結果とはいえ、皮肉な話だ。
 秋田県人会では昨年十二月に今年の祝い金該当者の調査報告を母県に送った。例年この名簿書類をもって交付申請書としてきた経緯があることから、今年度も祝い金が支給されるつもりで、敬老会の準備を進めている最中だったという。
 九月半ばに県人会宛てに届いた文書には、「県の行財政改革の結果」と、祝い金の廃止に至った経緯が述べられていた。寺田典城同県知事の署名入りで、今年祝い金を受領する会員、二百人強分の封書も届けられた。
 「本県から海外へ移住された方々の長寿をお祝いするため、昭和五十二年度(一九七七年)から毎年皆様にお届けしてまいりました『秋田県海外移住者敬老祝い金』につきましては、厳しい県財政を踏まえた結果、今年度から廃止せざるを得ない状況となりました」。
 会報あきたによれば、突然の知らせに役員会で「寺田知事に直訴を」との意見も飛び出した。「せめて今年度だけでも」と事務方トップに陳情書簡を送付したが、決定は変わらなかった。
 同会報には「金額的価値よりもずっと重い意味がある」と綴られている。「ともすれば忘れ去られがちな海外移住者に対して、母県は温かい応援を絶やさず『いつまでも元気で長生きするよう』励ましてくれるとお年寄りたちは受け止めてきたからです」。
 石川会長は「皆、楽しみにしていたのに」と声を落とす。「日本の老人にも祝い金を渡してないということでした」。同県人会では、祝い金の半額程度を会から支給しようと検討しているという。
 また、昨年で敬老金が廃止となった奈良県人会では「仕方がない」と梅崎嘉明元会長。八五年から二十年続いてきた関係が切れたことに落胆はあるが、敬老金再開に向けての申請をする動きはないと話した。
 廃止にはなっていない宮城県人会でも、一人あたり二万円ずつだった祝い金が昨年から一万円になった。今年度分はすでに七十歳以上の県人約三百八十人に交付されているが、〇八年を目処に打ち切るとの話が母県から届いている。
 中沢宏一同県人会会長は「廃止しようという動きはあるが、県人会の活動をアピールし、希望を持って交渉を続けていきたい。県と移住者とのつながりですから」と思いを語った。

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