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■記者の目■―――〝薄氷の勝利〟重く受け止めよ

2007年5月1日付け

 今回、統一シャッパを作ることが全候補者の念願だったはずだが、決選投票での統一シャッパの夢も潰えた。
 しかし、一票が他派に流れていれば、決選投票にもつれ込んだほどの僅差。上原二期への厳しい評価、大いに割れた結果と見ていい。
 選挙前の状況から、現体制を後押しするとされ、責任逃れの中立白票が、〃薄氷の勝利〃に繋がったともいえる。
 首の皮一枚で繋がった新執行部への風当たりが、反体制派が半数いる評議員会でも強くなることは必至だろう。
 評議員会長に選ばれることで、ようやく簾の向こうから姿を見せた渡部和夫氏が就任あいさつで述べたように、「選挙の盛り上がりが文協改革の成果」であるとするならば、この熱を冷まさせてはならない。
 一世VS二世の対立構造が浮き彫りとなった〇五年の選挙後、上原二期目スタート時の「一世を取り入れる」という〃公約〃は果たされなかった。今回同じ轍を踏むべきではない。
 新執行部の最初の仕事は、〃象徴会長〃の代わりに執行力を持つ合議制(Comite de Coordenadores)の確立だという。
 しかし、総辞職した岩崎会長時代の執行部(文協改革のきっかけと作ったとされる当時の執行部)の山下ジョルジ、木多喜八郎の両氏、体調を崩しているとされる多羅間俊彦氏、日系最大級の団体の理事長だが個人としてのリーダーシップには疑問の残る栢野定雄氏の四氏がその大任を担うことには、選挙前から疑問の声が出ていた。
 再度、評議員会内で選挙しなければならないが、再構成は可能だ。そして、十五人の理事の人選をどうするかが新執行部の手腕が問われるところだろう。
 第一回目の評議員会。ほぼ百パーセントの出席だったが、二回目はどうなるだろう。
 事業・決算報告、予算案の討議が始まるや否や、カフェに立ち、雑談、相談で会場はざわついた。
 評議員、理事会選挙が終わり、最後の監査役会選挙の開票結果には誰も耳を傾けず、新執行部のあいさつの会場は閑散、まさに〃祭りの後〃。
 定款の改正で評議員会が総会の役割も果たすことになった意味合いを理解しているのか。文協会員は約二千五百人。各評議員の肩に二十五会員の責任があることを認識すべきだろう。
 前回は選挙で燃え尽きてしまったのか、数カ月、運営が停滞。「一年間に二度カーニヴァルがあった」と皮肉る声も。
 新執行部は勝利の美酒に酔いしれている場合ではない。特に財政再建は急務であり、年々、余剰金を食いつぶすような運営をいつまでも続けている訳にはいかない。
 まずは、頭を下げるのをいとわず資金集めのできる人物、強力なリーダーシップをもった人、日本との強い絆のある人材を早急に執行部に取り込む必要がある。
 百年祭に向けた文協なりの取り組みを明確にするのに、残された時間はごくわずかだ。
 祭りは終わった。休んでいるヒマはない。本番は目の前だ。  (剛)

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