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「和牛」への認識広まる=飯崎さん「10年かかった」=ブラジル肉牛見本市で=1頭約5万レアルも

2007年6月28日付け

 「はじめて公に値がついた。和牛が、それだけ認められたってこと」。南米で最大の、ブラジル肉牛見本市(FEICORTE2007)が、十九日から二十三日の五日間、サンパウロ市のイミグランテス・エキスポセンターで開催され、和牛の展示、競(せ)りと、講演会「和牛・世界でより高価格な肉」が行われた。
 会場入り口に陣取った和牛コーナー。二十一日に行われた競りでは、二十六頭の和牛が競り落とされ、ブラジル和牛生産者協会の飯崎貞雄会長は「和牛を認識してもらうのに、十年かかった。あと十年かけて消費者によさを知ってもらう」と嬉しそうだった。
 一九九二年、ヤクルト商工社がブラジルで和牛の精液販売事業をはじめて、今年で十五年がたった。現在、ブラジル国内には、純粋(一〇〇パーセント)の和牛が約八百頭、他の種と掛け合わせた五〇%のクルザードが約一万頭生産されている。
 品評会には四十三頭の和牛が出展され、雌のグランド・チャンピオンには、七百十二キロ、ブラガンサ・パウリスタで飼育された黒毛の「Yakult Br 0007」が選ばれた。「質のいい受精卵用の卵がよく取れるんだ」と協会会員の藤田宗昭さんは説明する。
 競りでは、雄十九頭、雌七頭に買い手がついた。すべてが種付け用で、牡の平均販売額は一頭あたり五千二百七十レアル、雌は一頭あたり二万七千二百レアルで、雌の最高値は四万九千六百レアルだった。
 「予想以上にいい値段。ようやく和牛のよさが認められた」「純粋の和牛はまだ食べるには(頭数が少ないので)もったいないけど、これから二、三年後には月に十から二十頭の純粋和牛をつぶしていこうと考えている」と飯崎さん。
 現在、日本国外で純粋和牛を食しているのはオーストラリアのみ。ブラジルでは、五〇%の和牛に一般的なネローレ種の三倍の値がつく。「純粋なら五倍以上の値がつく」と協会関係者。
 見本市での講演会では、アメリカ、チリ、日本からそれぞれ生産者や専門家が集い、各国での和牛の現状や飼育方法、今後の見通しなどが話し合われた。
 日本から参加した武井正吾さん(80)は、北海道で約五十四年間にわたり、和牛の飼育に携わってきた。初めて、日本国外、アメリカに和牛の生体を輸出した人で、ブラジルでの和牛生産には、武井さんがアメリカに持ち込んだ和牛の受精卵が使われている。
 武井さんは「食べ物、気候にしても、ブラジル産の方がいいね。すごく順調に育っていて、嬉しくなるほど」と笑顔を見せ、「グランド・チャンピオンの雌和牛『―0007』は「ブラジルの看板牛。日本でも一等をとるのでは」と話した。
 「ブラジルの肉は三等品。これを一、二等にするには、和牛の質がものをいう。その中に、いい品質を作ろうと頑張っている日系人がいる。和牛が得た評価には、それだけの価値があるんだ」と、飯崎さん。
 アメリカから来伯した、テッド・ナルケさんは「今までは一部のグループが各国で自分だけでやってきたが、今回の会を通じて、初めて、和牛がグローバルの中で動いていることがわかった」と、満足そうだった。
 会場内には、和牛を提供する特設レストランが設けられ、来場者らがその肉の味に舌鼓を打っていた。

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