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減少続く県費留学・研修生=県連調査=補助金削減の影響受け=研修は4年前から半減=日本語能力も問題?

2007年7月4日付け

 ブラジル日本都道府県人会連合会(松尾治会長)の調べにより、二〇〇七年の県費留学生、研修生の人数が明らかになった。留学生・研修生派遣制度については、〇三年に外務省が補助金削減を打ち出し、県連、県人会を通じて制度の存続が大きな議論となったのは、記憶に残るところ。県連が確認しているところでは今年、留学生は十八県から二十四人、研修生は二十一県から三十七人が日本に向かう。制度が話題とされた〇三年と比べ、留学生は九県十二人、研修生は十五県三十四人の減少となった。
 今回の調査は、県連が「調査用紙を配布しても、県人会からほとんど返答がなかった」ために、職員が各々の県人会に電話で問い合わせ、今年四月前半ごろに集計。県連に残る留学生・研修生の実態データとしては、〇三年から四年ぶりのものとなる。
 〇三年は、留学生が二十七県から三十六人、研修生が三十六県から七十一人訪日しているが、今年は、それぞれ人数が三分の一から半分ほど落ち込み、派遣する県の数も、全都道府県のうち半数以下に。十三の県では、留学生、研修生ともに派遣していないという状況が明らかになった。
 一九五九年に岡山県から始まり、七六年までに全都道府県へ広がった「県費留学生・研修生受け入れ制度」。これまでに五千人以上の留学生、研修生が日本で学んできたが、〇三年、外務省からの補助金カットを受けて以降、各県で人数枠の減少が著しくなった。
 交通費の自己負担、生活費の削減など、自助努力で継続を図る動きもあったが、その後の動向は今年の留学生、研修生の人数が示すとおりである。

他地域からの受け入れも

 県連関係者は、減少の理由に、補助金の削減とともに「各県とも国際化に力を入れるようになって、最近では中南米対象でなくて、アフリカやアジアからもよく人を受け入れているから」と推察。「日系人でなく他地域の姉妹都市から受け入れようということになっていて、県としての留学生、研修生受け入れ人数全体は減っていないのでは」と話した。
 また、「たとえ受け入れ人数の枠が多くても、日本で日本語研修がなくなった今、県人会が日本語のできる希望者を探し出すのが難しい」と、ブラジル側の事情もつけ加える。
 福井では実際に留学生枠があるが日本語能力がネックになり、今年は応募者がいない。また同県は従来から、研修生応募者に県人指定を課しておらず、昨年は二人が他県人だった。
 大分でも、友好都市であるエスピリット・サントからの応募を受け付け、対象を日系人に限っていないという。
 一方、「うちは、知事が『国際交流が大事だ』って言ってますからね」と自信をみせるのは、福岡県人会の南アウグスチーナ副会長。毎年、全額県負担で、パンアメリカン地域から十人を迎えている同県。今年は七人がブラジルから一年間の留学に旅立った。
 「日本語の能力は厳しいですけど、県に関係のある人をよく探しています」。毎年希望者が減ってきていると内情を明かしつつ、八〇年に自身も留学している南さんは、「(日本に)いけば、ブラジルや日本、コロニアに対して見方が変わります。たとえ、一時県人会を離れたとしても、長い目で見れば、世話になったと戻ってくる人たちです」と留学、研修制度の意義を話した。
 七三年、九二年と二度にわたって研修生として訪日した伊藤アンテノール愛知県人会会長は「日本に行ってなければ、自分のプロフェッショナルとしての道はなかったかもしれない」と、研修の成果を振り返る。
 システムエンジニアリングを専攻し、富士通とシャープで働いた経験から、帰伯後すぐに、六人の部下を持つチームリーダーに。「技術的なことは結果に直結してくる。専門用語も理解して、若い頃に基礎を積んだことが今につながっている」と話した。
 伊藤さんは、「日本では一人。甘えがきかないし、専門だけでなく人間関係や文化の違いもいい勉強になります。お金を払ってでもいくべき」と留学、研修への参加を強く勧めている。

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