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鯉洗いづくり=3代目は女性=バストスで大野さん一家=自然繁殖でふやす=人気、フェスタやお見舞い

2007年7月31日付け

 鯉の洗い――。さく切りした鯉を冷水に潜らせ、身を引き締めて食べさせる刺身の一種だ。身が引きしまり、歯切れのよい弾力性が出るとともに、脂分が抜けさっぱりと食べることができる。洗いの調理を五十年以上続けてきた大野さん一家(バストス在住)に会った。
 「必ず生きている魚じゃなきゃ駄目なの」。よく磨がれた包丁を握りながら大野ルイザさん(58、二世)は洗いを説明する。
 バストスの街中から四キロのところに六つの池があり、そこで二種類の鯉を育てている大野家。黒い色のウンガロ種と、ウロコが大きくなるというアレマン種で、鑑賞に用いられる紅白の鯉(錦鯉)は食すには良くないという。また、育ち過ぎても骨が大きく身が固くなるため、洗いには六百から七百グラムの小ぶりなのがちょうどいい。
 「お湯と氷水を用意しておいて、さっとやるの」。池からタモで掬い上げたばかりで桶の中をはね回る鯉を捕まえて、頭をバッサリ。流水で洗い、そのまま三枚に下ろして皮をはぐ。池の管理をしている使用人、エジージオさんも慣れた包丁さばきで、ルイザさんを手伝っていた。
 切り身にして「お風呂くらい」の温度の湯に入れて洗い、その後すぐにざるで氷水に移して終了だ。見た目でもよくわかるほどに、鯉の身がピンと張り、引き締まっている。
 「臭いもないし、コリっとしてて他と違うし。外人(非日系人)も好きなんだから」。さばいた鯉から卵がとれることもあり、ピンガと塩、ピメンタで漬けて、塩辛にして食べるそうだ。
 大野家が鯉を飼い出したのは、五十年以上前。ルイザさんが三代目で、夫の悟朗さんの祖父、セイイチロウさんが初代だ。
 「日本に居たときから魚を飼うのが好きで、田んぼでもやってたみたい」とルイザさん。セイイチロウさんは農業を退いてから、三匹の稚魚を小さな池で育てて、増やした。
 次第に規模が拡大し、二代目のヒデオさんの時には十二の池で鯉を育てて各所に売り、「それ(その儲け)で子どもを大学に行かせた」とか。「二十年ほど前のバストスの入植祭では、鯉の洗いと味噌汁に三百キログラムをさばいたこともある。ヒデオさんの妻、初美さん(89)は「そんなこともありましたね~」と懐かしそうに笑った。
 ヒデオさんの引退のあと、悟朗さんは医者の仕事で忙しいため、妻のルイザさんが三代目を受け継いだ。
 大野家の鯉は自然繁殖のため、ルイザさんにも「今何匹いるかわからない」。他の地から分けてほしいという人が来るが、そこの水が良くなく、上手くいった例は少ない。「鯉は食べ物よりも、水が大事なの」。近くで湧き水が出るという池の立地が、いい鯉が育つ秘訣でもある。
 「今はあまり商売にならないけど、長いことしてきたから続けてる。フェスタとかお見舞いとか、友人が集まったときなんかに出してるだけよ」。ホテルやレストランに下ろすことはしていない。
 最近では、十二の池を二つずつ合わせて六つにし、うち三つの池ではチラピアを飼って週に二回フィレを出荷していると話し、「私のいいお小遣い」とルイザさんは顔を緩ませた。

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