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≪解説≫援協福祉センター建設=役員の意見統一=〃身の丈〃に合わせて=資金面配慮、規模を縮小=09年半ば完成めざす

ニッケイ新聞 2007年12月27日付け

 【解説】「〃身の丈〃にあった現実的な意見に落ち着いたと思う」――。援協(森口イナシオ会長)の福祉センター建設に関して、関係者の間からこうした声が聞かれるようになった。去る二十一日に開かれた定例理事会で、来年一月初旬に日系の建設会社三社を招いて、規模を縮小したセンターの設計書に対する新たな建設費の見積もりを依頼する考えが明らかになった。〃実現可能な〃移民百周年の箱もの事業でもある援協福祉センター。センター着工に向けての現状と、これまで関係者の動きを振り返る。
 「(センター建設計画は)正直手間取っている」――。去る十一月二十四日の第三十回援協地区委員総会の場で、同事業の進行状況について、森口会長はうつむきながらこう説明した。
 その席で同会長は「建設予算が私達の思っている以上の金額となりこのままでは(実現が)難しい現状」とした上で、「私達の出来る範囲でセンターを建てたい。正式にはそのうち発表できると思う」と述べた。
 そう述べた理由には、センター建設委員会のなかで、同会長を含めて「どの規模でセンターを建設すべきか」という、基本的な意見統一がなかったことが背景にある。
 センター建設委員会は森口会長を代表にして昨年五月に発足。日伯友好病院や総合診療所の医師や関係者などの意見を取り入れながら計画を練ってきた。しかし一方で、センターの規模縮小や計画練り直しを根強く主張する派と、地上五階・地下三階立ての〃立派なセンターを〃とする派に分かれた状態も続いた。
 この意見の相違はセンターの設計書が完成し、各建設会社から千三百万レアル前後の建設費の見積もりが提出された今年九月ごろから、さらに分化した。
 いわばセンターを建てるにしても、今年度の事業費としてすでに用意している六百万レアルの建設費の範囲で建てれば良いとする一部の慎重派、不必要な設計個所を見直して建設予算の縮小を図り、資金的な不足部分は募金に頼って建てようとする中道派、募金活動の強化などによって当初の設計通りの建設しようとする〃理想派〃に分かれた形となった。
 森口会長は、といえば、自身の任期中における一大事業と位置付け「立派なセンターを」と根強く推した。
 こうした意見の相違が広がるなか、センター建設地の解体工事が今年十一月に開始された。援協は創立五十周年となる〇九年半ばまでのセンター完成を目指していることもあり、「年内にも着工しなくては、再来年中旬での完成に間にあわない」といった焦りも関係者にあった。
 しかし、意見の統一なしに、一部の意見だけで工事を始めれば「後々争いの火種が大きくなる」との危機感も生まれた。そうした中、今年十一月末に臨時会議を開き、意見交換、調整が行われた。その結果、森口会長が譲歩、全体としては〃身の丈にあったセンターを〃として、中道の意見に落ち着いた。
 「本当は節目の年に合う立派なセンターを建てたいと思っていた。でも夢ばかりでなく、資金面など現実的な問題を考えれば、規模を縮小することが援協にとって大切と納得した」。森口会長は現在、そう話している。
 これらの話し合いをもとに、駐車場建設を目的にした地下三階の当初の設計は地下二階半に減らし、屋上にあたる五階部分は屋根をはずすなどして事実上カット、外壁もシンプルなものにするなどして、二百万から三百万レアルほど建設費を低減する計画になった。資金協力の面で援協最大の恩人である、神内良一氏(プロミス名誉会長)の名を冠した講堂は、五階から四階に移すことになった。
 資金的には、すでに確保している六百万レアルに、さらに二百万レアルを来年度の日伯友好病院の収益から補填し、約八百万レアルを自前で用意する計画案も今月の理事会で承認されている。
 現在、関係者の間で「自前の資金でセンターを建て、数百万レアルに及ぶ医療機器や内装費は寄付でお願いしていきたい」と意見を収拾。森口会長は「できれば施工会社を来月末までに再選定し、二月にも建設工事が始められれば」と話している。(池田泰久記者)

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